山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • 燃ゆる女の肖像
    人生の選択肢が少ない時代の女性の恋が切ない
    ★★★★

    ラストシーンが感動的で、この余韻を残したまま再見したいと思ってしまった。民主主義はもちろん、同性愛が認知されていない18世紀を舞台に女性画家と貴族令嬢が静かに、そして着実に恋の炎を燃やす様が美しく描写される。互いを見つめ合い、そっと肌に触れながら想いを確かめる二人の姿に恋愛経験のある人なら誰もが共感するだろう。望まぬ妊娠をした女中をめぐるサブストーリーでは、死と自由の微妙なバランスを感じた。ギリシャ神話のオルフェをめぐる解釈で二人の関係とその後を示唆する演出も知的で素晴らしい。強い眼差しが印象的なN・メルラン、繊細な心理演技で魅了するA・エネル共に快演だ。

  • ザ・プロム
    「ビバ寛容性!」のメッセージが熱い
    ★★★★★

    LGBTQへの理解度が低いアメリカ中西部で葛藤するゲイの女子高生の物語で、R・マーフィー監督が映画化したのも納得のブロードウェイ・ミュージカル。人気ドラマ『Glee』と似たセッティングだが、演劇界セレブの再生がコミカルに描かれる。あるがままに生きることの大切さや寛容性を持とうというメッセージがしっかりと伝わる。人助けをPRに使おうとする野心的女優をM・ストリープが大熱演していて、圧倒された。『マンマ・ミーア!』より断然いい! N・キッドマンが歌い踊るフォッシー風ソングやA・ラネルによるソンドハイム風パフォーマンスもあり、まさにブロードウェイ賛歌。新星ペルマンの素晴らしい歌声が心に響く。

  • ミセス・ノイズィ
    視点を変えれば、他人への理解も増すはず
    ★★★★

    騒音おばさん事件から発想した作品だが、現代人が直面する孤独や人間不信に踏み込んだ多面的で深い人間ドラマに仕上がっている。隣人との間に生まれた誤解が嫌がらせ合戦に発展し、被害者とされる小説家も一見「危ない?」と思われる加害者(?)である中年女性も言い分があり、監督が視点を変えることでそれぞれの人生模様が浮かび上がる作りが巧みだ。SNS社会におけるメディアリンチの恐ろしさや他人と関わらずに生きたがる現代人の寂しさがズシンと胸に響いた。大高洋子が演じた騒音おばさんの、人生のあれこれを飲み込んで真っ直ぐに生きようとする孤高の姿勢がかっこいい。すぐにひよってしまう自分を反省してしまった。

  • ヒトラーに盗られたうさぎ
    困難な時代もなんのそのな子供のたくましさに感動
    ★★★★★

    ナチスが政権を握る直前にドイツを脱出した一家の逃避行を9歳の娘アナの視点で描いているため、ナチスの恐怖というよりも新生活への好奇心やワクワク感が前面に出た心温まる家族の映画となっている。スイスでは牧歌的に暮らした一家がパリでは貧乏生活を余儀なくされて夫婦関係がギクシャクなる瞬間はあるものの、家族の愛情こそが互いを支えたことがよくわかる。K・リンク監督が『名もなきアフリカの地で』で描いたナチスから逃れた家族同様、本作の子供たちも順応力が素晴らしく、子供のたくましさに感動する。特にアナは絵も上手で、絵本作家ジュディス・カーがモデルだもんなと納得。

  • 君の誕生日
    喪失感を埋めるには悲しみを分かち合うことも重要
    ★★★★

    多くの若者が命を落としたセウォル号沈没事件を題材にしただけあって、非常にドラマティックで涙を誘う。事故で長男スホを亡くした夫婦が事件と折り合いをつけるまでの物語で、悲しみを分かち合うことの難しさも描かれる。また補償金目当ての親族の姿に「これが現実なのか」と悲しい気持ちになるも、悲しみにくれる母親と罪悪感いっぱいの父親の間で健気に生きる妹の健気さに癒される。そして亡くなったスホと関わった人々が語る思い出話に大号泣。ソル・ギョング&チョン・ドヨンの久々の共演作でもあり、見応え十分。ドヨンの涙が実にリアルだ。亡くなったスホを慕っていた隣家の少年を『愛不時』のタン・ジュンサンが素朴に好演している。

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