山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • 私たちの青春、台湾
    社会を変えようとした若者の夢と挫折が切ない
    ★★★★

    ひまわり運動が起こっていたとき、台湾で数日間を過ごしたので学生や市民の熱狂に圧倒されていた身にとって、運動の高まりや背景が興味深かった。リーダー格の青年が香港の民主を維持しようと頑張るJ・ウォンやA・チョウとも連帯していた点に若者らしいパワーを感じる。そういう盛り上がりに賛同した中国人留学生ブロガーが「もしかして中国も?」と淡い期待を抱く姿は、習近平の独裁化が進む現状とかけ離れすぎていて切ない。傅楡監督が彼らに託した夢がうち砕かれる過程はほろ苦い。が、監督が2年間の自問自答を経た結果、大人になった彼女自身の冷静な視点による青春の回顧録となった。国家礼讃に走る中国映画と比較しながら見て欲しい。

  • 相撲道~サムライを継ぐ者たち~
    多角的に分析された相撲に俄然興味が湧いてきた
    ★★★★

    相撲には無知だったけれど、国技館で力士の勝負を生で見たいと思わせるドキュメンタリーだった。力士の勝負にかける意気込みや「勝つ」ことへのこだわりが伝わり、正真正銘のプロ・アスリートと納得する。稽古中に人肉が衝突するときの重々しい音が大迫力だ。稽古や日常に密着し、力士の本音を引き出す監督の手腕が素晴らしい。漫画や相撲通のコメントなどを挿入し、競技の歴史やカルチャーを多角的に解説する構成なので、相撲初心者でもわかりやすかった。力士の着物がチャーミングなのも新発見! そして痛快なのが、焼肉屋での力士の豪快な食べっぷり。店の肉と米を食い尽くすイナゴのような旺盛な食欲に驚愕だが、これぞ力士なり!

  • パピチャ 未来へのランウェイ
    立ち上がる女子大生に勇気をもらえる
    ★★★★

    内戦下のアルジェリアに生きる女子大生の苦悩がわかり、イスラム原理主義者による女性弾圧の恐怖が伝わる。宗教を曲解した「女はかくあるべし」という考えを押し付けられ、死と背中合わせの青春とは!? 性欲抑制剤入り牛乳を飲ませられるなんて拷問だ。そんな状況で夢に向かって疾走するヒロインの覚悟が心に響く。彼女流の抵抗だ。日本では#MeToo運動が拡散しないが、実際はさまざまな局面で生き辛さを感じている女性は多いはず。そして無自覚に俺様目線で生きている男性もな。男女ともに意識を変えることが、あるがままの自分でいられる未来につながると思わせる作品だ。ヒロインを演じたL・クードリの力強い眼差しが印象的だ。

  • 愛しの母国
    国家礼賛作で中国人のメンタリティを知る
    ★★★★★

    チャン・イーモウ監督が渾身のパワーを注入した、建国70周年を寿ぐ国家礼賛作品! 国旗掲揚に関係する2つのエピソードに国旗にかけるチャイナ・プライド(?)を感じるが、面子が何よりも大事なメンタリティに失笑。中国版チェルノブイリを体を張って防いだ青年、神船10号の帰還に遭遇し真人間となる兄弟などなど、名も無き国民の奮闘が国を作ったという構成に政府の指導が透けて見える。日本人の知らなかった逸話もあり、「それ、美談ですか?」と不思議に思うことも少なくない。この作品で愛国感情を昂らせているという中国人の考え方や政治思想を知る上では参考になるかもしれない。

  • ザ・ハント
    どっちもどっち? 対立の不毛さが際立つね。
    ★★★★

    人間狩り自体に新鮮味はないが、狩る側が人権や環境問題に敏感なリベラルというのがユニーク。トランプ政権下で浮かび上がったアメリカの溝がよくわかるし、対立は結局、不毛でしかないと実感する。狩りの獲物となるのは盲信した陰謀論をまき散らす肥満男性や、憲法を盾に大量に銃を所持している右派っぽい男性などなど。友達にはなりたくない人ばかりだが、だからと言って犬死させてもいいわけでなしと思わせるのは、リベラルの描き方が超絶嫌味だから! 製作陣のバランス感覚が素晴らしい。『GLOW』のB・ギルピンがタフなヒロインを飄々と快演。女優が体を張ったラストのバトルがちと長いが、オスカー女優に花を持たせるためだろう。

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