略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
主演作が立て続けに公開されているクォン・サンウの今年の最高傑作がこれ! 暗殺者として育成されたのに漫画家になる夢を追って国家を欺いた元エージェントと敵の追いつ追われつをコミカル&サスペンスフルに描いていて、物語もこなれているし、緩急の付け方が秀逸。漫画っぽいキャラクターと相性がいいサンウのアクション演技も非常にカッコよく、40代とは思えないスピード感と迫力に惚れ惚れした。もちろんコメディ演技でも彼らしさを発揮していて、ファンでなくても好感を抱くはず。ウェブ漫画やアニメーションを巧みに取り入れた映像も楽しく、おしゃれ。チェ・ウォンソプ監督は今後要チェックと心の暗記ノートにメモしました。
チョモランマ登山を国家プロジェクトとして成功させた中国登山チームの実話だが、VFXを駆使したド派手なアクション映画。ウー・ジンが演じる隊長に率いられるメンバーは登山にはあまり役立ちそうもない訓練に耐え、登山中に遭遇する雪崩や滑落、剛風で命が脅かされそうな危機をカンフー的な力技で乗り越える。雪山でのワイヤー・アクションには撮影スタッフの苦労がしのばれる。氷点下の気温にもジッと耐えた撮影陣の精神力たるや! 国威掲揚の目的は果たされるでしょう。雪山でもキレッキレのアクション演技を披露するウー・ジンと相変わらず愛らしいチャン・ツイイー、友情出演のJ・チェンの中国での立ち位置もよくわかる。
イケてる街に住み、仕事も人生も大満足という女性二人の選択がテーマだが、すべてがおしゃれ。主人公たちが身につける服もメイクもインテリアもファッション雑誌から飛び出したかのよう。鮮やかな色彩を使った映像も新鮮だし、台詞回しも自然でいい。ただし未婚で出産という選択に反対意見は出ず、主人公たちが些細な喧嘩をする程度で、丸く収まるあたりは目が点に!? 周囲ももれなく応援ムードなのが今どきなのだろうが、現実の厳しさをもう少し描いてもよかったのでは? 可愛くて、頑張り屋さんなシングルマザーとなる彩乃役の阿部純子と自身を重ねて同じ選択をしたら、「保育所落ちた、日本死ね!」となるのがオチだから。
反アパルトヘイトを掲げて黒人差別と戦った白人が悲惨な状況を強いられていたことがわかる実話だ。良心に従ったがために政治犯として有罪判決を受けた主人公ティムは、脱獄して戦い続けたいガッツの持ち主。ガンジー的闘争を選択した先輩囚人に対し、「これは戦争だ」と宣言して共闘を求める行動派だ。彼が意外すぎる手法を考え出し、相棒とともにトライ&エラーを重ねて脱獄方法を探る課程は非常にサスペンスフル。協力者も増える反面、監視も厳しくなる状況に見ていて胃がキリキリ。何度もヒヤリとさせる演出が巧みだ。ティム役のD・ラドクリフがさまざまな局面に耐えながら、信念のために戦う青年を力強く演じている。
タイムトラベルものの概念を軽々と超えたC・ノーランの世界観と独特な映像美に圧倒されっぱなしの2時間半! SF脳じゃないので時間の逆行の理論に最初は戸惑ったが、映像で理解させるのはさすがの演出力といえる。順行と逆行をひとつの画面に納める画期的な絵柄にただ感動。ガジェット関係もめちゃくちゃかっこいい。主人公のミッション遂行と同時に発生する数々の謎を、最後にきちんと組み合わせてパズルを完成させる展開にカタルシスというか達成感を感じる。ご贔屓のE・デビッキがドSな夫に苦しめられるヒロインを熱演していて、彼女とドヤ顔のK・ブラナーとの対決では胸がスカッとした。