山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • リトル・ジョー
    自然を意図的に変えてしまうと何が起こる?
    ★★★★★

    幸福感をもたらす芳香を発する植物を開発した植物化学者アリスが遭遇する奇妙な出来事が不気味さを増幅させ、現代社会に警鐘を鳴らす。台詞やサブストーリーなどでメンションせずとも、監督が遺伝子組み換えの是非や働くママの罪悪感、精神分析に頼りがちな現代人の弱点などに言及しているのは明白で、ボディスナッチャーものとしては奥深い! J・ハウスナー監督作は、幸福と妬みはワンセットと考えさせた『ルルドの泉で』しか見ていないが、本作はカラーパレットや音楽で物語に躍動感を持たせているのが独特と感じた。特に雅楽を思わせる伊藤貞司の音楽が印象的だ。

  • パブリック 図書館の奇跡
    アメリカの公共図書館は懐が深いな~
    ★★★★★

    貧富の差が拡大する状況に新型コロナが追い打ちをかける昨今、失職したらホームレスとなる可能性大なわけで、実は他人事じゃないドラマだ。脚本も手掛けたE・エステヴェス監督がホームレスに対する政府(と富裕層)の無関心を暴こうと頑張っている。さすがは戦うリベラル俳優M・シーンの息子だ。図書館占拠事件を自身の出世に利用しようとする政治家やTVリポーターの描写がカリカチュアっぽいが、わかり易さ優先なのだろう。しかしホームレスの描写が甘いのは、減点ポイントだ。実際はメンタルに問題を抱えた人が多く、目からレーザー光線が出ると主張する新入りにそれを集約させるだけでは、真の問題点から目を逸らすことになる。

  • グレース・オブ・ゴッド 告発の時
    シニカル&エロを封印したF・オゾン監督の詩的な実話ドラマ
    ★★★★★

    カトリック司祭による性的虐待事件が続くが、本作はフランスの事件を被害者側の視点から描く。トラウマを抱えながらも信仰を捨てない男の勇気ある告発がさざ波のように静かに広がっていく過程をF・オゾン監督が情緒的に描写。教会の隠蔽体質や事なかれ主義、さらには「告解で贖罪」という許しがたい現実で闇に葬られようとしていた事件を暴いていく。といってもセンセーショナリズムに流れず、監督は常に心に傷を負った被害者に優しく寄り添う。事実をニュートラルに描くことが逆に見る側の怒りの炎に火をつける。係争中で公開差し止めの危機もあったらしいが、その時点で80人強と噂された被害者が実は3000人超えというから驚愕!

  • ブリット=マリーの幸せなひとりだち
    万能な重曹でシミは消せても、孤独感は消せない
    ★★★★

    夫の愛人に直面する事態となって家を出た専業主婦ブリット=マリーの社会人デビューと成長がユーモラスに綴られる。「たいていの問題は重曹で解決する」家庭という小さな世界に閉じ込もっていたヒロインが足を踏み出した先で出会った人々に背中を押されて、歩みをさらに進めていく姿が微笑ましい。サッカーに夢を託す移民少女との関係性に心打たれ、やもめ男との恋めいた関係にもにんまり。夫がいても孤独だった女性が独りになったことで本来の自分に気づき、自信を取り戻すのは本当に痛快だ。スウェーデンの名女優P・アウグストが徐々に輝き始める中年女性をリアルに演じていて、後半では「同じ女性?」と思わせるほど柔和で美しく見える。

  • 誰がハマーショルドを殺したか
    で、事実はいったい何だったの?
    ★★★★★

    1961年に他界したハマーショルド元国連総長の死の謎を追うドキュメンタリーで、フーダニット&ホワイダニットが基本。M・ブリュガー監督は暗殺前提だ。ただし謎が謎を生み続けるので、監督が秘書二人とロールプレイもどきをしながらこんがらがる自体を整理する設定が演劇的でユニークだ。コミカルですらある。暗殺事件の背景を探るうちに南アの白人至上主義が絡む謎の組織サイマーの異常な作戦にぶち当たるし、MI6やCIAの関与を匂わせる関係者や証言そのものが果てしなく胡散臭かったりで「事実はどこに?」という気分になる。取材に7年間かけた監督と相棒の根気強さを評価したい。奇想天外な話が続き、何度でも見たくなる絶品なり。

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