山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • 悪人伝
    常軌を逸した悪に対抗するには反則技も必要ね
    ★★★★

    ソシオパスな連続殺人犯というわかりにくい悪に対抗するために刑事がヤクザと手を組むという反則技の設定がまず面白い。ドンソク兄貴が演じるヤクザはバイオレンス度が高く、チンピラをサンドバッグに入れてワークアウトし、指でチンピラの歯を引きちぎる。怖い! が、女子高生に傘を貸す優しい側面も披露するし、みんなが大好きな兄貴もちゃんといる。刑事役のキム・ユヨルは兄貴ほどの迫力はないが、風雑な心中をしっかり表現。反社と共闘する刑事が“毒を食らわば皿まで”と開き直らず、忸怩たる思いを抱えるのもポイントだ。ヤクザ集団と警察が犯人追跡で競うシーンはかなりスタイリッシュだし、締めの兄貴のまなざしにグッとくる。

  • バルーン 奇蹟の脱出飛行
    本当にあったミッション・インポッシブル
    ★★★★★

    ドイツが東西に分かれていた冷戦時代に起きたハリウッド映画のような亡命劇だ。主人公ピーターは平凡な市民で、一度は失敗するが自由への希望捨てがたく、奇想天外な国境越えに再度挑む。秘密警察が包囲網を狭めるなか、ピーターたちは地道にミッションをこなしていく。作戦が後半に差し掛かると危機、また危機の連続で。スリリングさが加速し、見ているこちらの緊張Max。結果を知っていても、ハラハラしてしまう。自身も東から西に亡命したT・クレッチマンが秘密警察の中佐を演じていて、本物に監視されたことがある彼ならではのリアリティ! 亡命者の後日談も実はいろいろあったようで、それも映画になりそう。

  • グッド・ワイフ
    経済破綻でわかる選ばれた女=セレブ妻の虚しさ
    ★★★★★

    1982年のメキシコ債務危機によってセレブ主婦が覚醒する姿を描いているが、主人公がまず退屈。ブランド品ショッピングとテニス、他人の噂話に明け暮れる日々。フリオ・イグレシアスに歌を捧げられるのは夢らしいが、すべてにおいてバカすぎる。セレブ妻仲間のマウンティングも「は?」な感じで、リッチな男と不倫&略奪婚した若妻をバカにするあたりも実に嫌ったらしい。セレブ妻って結局、夫の資産で立ち位置が決まるわけで、他人の金頼りの人生の虚しいこと。デヴィ夫人の「選ばれる女におなりなさい」愛読者は本作を見て、よく考えたほうがいいね。

  • 透明人間
    ツッコミどころはあるけれど,E・モスの演技でひっぱる
    ★★★★★

    H・G・ウェルズの原作と趣が異なり、本作は粘着気質な透明人間に狙われた女性の恐怖が描かれる。モラハラ男がストーカーになるだけでもホラーなのに、恐怖の渦中にあると誰にも信じてもらえない絶望感たるや!? 目に見えぬ敵に脅かされ、心神喪失寸前まで追い詰められヒロインをエ・モスが体当たりで熱演する。さまざまに揺れ動く心理を巧みに演じ分けていて、まさに彼女の一人舞台だ。特に反撃に転じる後半は彼女の“か弱そうに見えて実はタフ”というイメージが生きた。ペンキをかけられた透明人間が足跡も残さず逃げるなどのご都合主義的な展開にツッコミたくはなるが、モスの演技だけでも見る価値はある。

  • マルモイ ことばあつめ
    監督の優れたバランス感覚が物語をさらに深くした
    ★★★★

    光州事件や民主化闘争など韓国映画界は最近、歴史と向き合っている感がある。本作もそうで、日本統治時代に朝鮮語を残そうと努力した人々の苦難が描かれる。国の言葉には国民の魂が宿るもので、言葉を奪うことへの怒りが伝わる。が、オム・ユナ監督は反日をあまり強調せず、言葉集めと辞書編纂に情熱を傾けた人々に集中。人生観も性格も真逆のジョンファンとパンスを軸に当時の庶民の思いや選択が描かれる。投獄されても戦った人もいれば、日本におもねらざるをえなかった人もいたとよくわかる。監督の優れたバランス感覚が物語をさらに深くしているのだ。文字を学び、世界を広げるチンピラ、パンス役のユ・ヘジンがまた光っている。

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