山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • テリー・ギリアムのドン・キホーテ
    製作にまつわるアレコレの方が面白いかも
    ★★★★★

    T・ギリアム監督が苦節20年を費やした作品で、最初の失敗を映画化した『ラマンチャの男』の面白さゆえに見る前から期待が大きすぎた。愛着がありすぎてカットできなかった映像が多いと察するが、とっ散らかった部分が目立つし、やや冗長。ただし芸術への情熱や複雑な人間関係、裏切りや狂気といったテーマは監督自身が映画製作において味わった苦難を想像させる。また頭のネジがゆるんだ主人公がファンタジー的な世界へと逃避する構成は、全盛期のギリアムらしさを感じさせる出来栄え。そして今回、別作品でオスカー候補になっているA・ドライバーとJ・プライスの頑張りは必見!

  • バニシング
    灯台で何が起きたのか? 新たなセオリーは深かった
    ★★★★★

    1900年にフラナン諸島の灯台守3人が忽然と姿を消した事件を新解釈した人間ドラマだ。嵐による大波にさらわれた、諍いで殺しあった末に海に落ちたなどの推論とは異なり、人間の強欲と罪悪感、そして狂気説が悲劇を生んでいく。“汝殺すなかれ”を規範の一つとする宗教観もにじみ、かなり深みのあるサイコスリラーとなっている。J・ヒューストン監督の『黄金』を思わせる部分もある。ベテラン灯台守役のピーター・ミュランの顔に刻まれたシワが海の男の孤独を表現するいい仕事をしている。デンマーク人俳優ソーレン・マリングのクセのある顔立ちも強烈な印象を残す。

  • 彼らは生きていた
    ピージャクのオタク魂が生んだど迫力映像
    ★★★★★

    『1917』に続けて、本作を見たこともあり、第一次世界大戦の泥臭い恐怖が骨の髄まで染みこんだ。当時の写真や映像、絵画などの素材を最新技術で加工した戦闘場面の迫力にただもう圧倒される。出征した兵士のインタビュー肉声が臨場感を生むと同時に死と背中合わせの状況でもユーモアを忘れない人間本来の強さ、仲間を思いやる人間性に感動してしまう。名もなき兵士にレガシーを与えたエンドクレジットまで目が離せない。膨大な資料や素材をふるいにかけて、スクリーンに戦争をリクリエイトする緻密な作業を考えると気が遠くなるが、それこそがP・ジャクソン監督のオタク魂! もう降参です。 

  • キャッツ
    2020年ラジー賞最有力候補かもだけど、嫌いじゃない。
    ★★★★★

    予告編公開段階であがったディスの声が公開直前にマックスになり、逆に期待してしまう。批判された欠点に同意する部分も多いが、私は嫌いじゃない。ヒロイン役のF・ヘイワードやレ・ツインズらの力強く美しいダンス、マッケラン様のコミック・リリーフは楽しめる。なによりもJ・ハドソンの『メモリー』熱唱は涙モノで、彼女自身も鼻水までたらす熱演を披露する。また『メモリー』の返歌でもある新曲『ビューティフル・ゴースト』も作品にマッチしている。マキャビティを演じたせいでI・エルバ兄貴が007を演じる可能性が消えた気もするが、みんなでCross Paws!

  • ジョジョ・ラビット
    ナチスの恐怖を子供視点で笑い飛ばす快作
    ★★★★

    ナチス予備軍ヒトラーユルゲントをコメディ仕立てに描いたT・ワイティティ監督の大胆さは賛否分かれるかもしれない。ナチスにもいい人がいる設定だしね。S・ロックウェルの怪演に笑って、泣いた。しかし人種差別の愚かさやマインドコントロールの残酷さ、さらには分断を許さない姿勢など本作が伝えたいメッセージは正しく、静かに心に滲み入る。ヒトラーを心の友とする気弱な少年ジョジョ役のR・G・デイビス君はこれがデビューらしいが、堂々たる演技を披露する。ユダヤ人少女との初恋めいた関係にも胸キュン。しかし、私が惹かれたのは彼の“2番目”の親友ヨーキー君。戦争のアホらしさを達観した少年の賢さを体現していて、お見事!

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