略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
フェラーリに合併を蹴られたフォードが誇りとビジネス拡大をかけて臨んだル・マンの熱き戦いに大興奮。とはいえJ・マンゴールド監督が匠の技を発揮するのは、観客の心をひとつにする演出だ。打倒フェラーリに尽力するチームのメンバーVSビジネス面で様いろいろと画策するフォード社重役という図式で物語を盛り上げ、クライマックスのレース場面へと感動を繋げる。レース場面の疾走感と凝ったカメラワークにしびれる。メカニック出身の破天荒なレーサー、マイルズを演じるC・ベールの憑依演技は相変わらず素晴らしいが、アイアコッカ役のJ・バーンサルや悪役ともいえるJ・ルーカスの好演も物語を引き締めている。
人気グループ<フィッシャーマンズ・フレンズ>のデビュー話にインスパイアされた人間賛歌だ。ロンドンのレコード会社重役と漁師たちの価値観の違いを浮き上がらせながら、身の丈感覚を大事にしながら生きることの大切さを教えてくれる。イギリス国家を所望されたグループが誇り高くコーンウォール・アンセムを歌う場面は物語の鍵となるが、ほかにもニヤリとするシーンが多々。個人的なお気に入りは、漁師たちと絆を培うべく漁船に乗り込もうとする主人公にユニークな漁師ジンクスが次々と伝授されるシーンだ。「なぜ?」と目が点なるジンクスもあるが、心に刻んだ。そして、ロケ地の美しい風景や漁師のピーコート姿にうっとり。
貴族の館を舞台に移りゆく時代や人間模様を描いた人気TVシリーズの映画版は、さらなる続編を期待する出来栄え。聞き慣れた音楽で始まる冒頭から目が釘付けだし、ロイヤル・ビジットをめぐるダウントン邸の人々の活躍に胸踊る。女性が自立する時代の到来や王族も人間なのだと感じさせるゴシッピーな逸話など複数のサブプロットをきちんとまとめ上げたJ・フェローズの筆力はさすが。彼自身が貴族なので、真実味が加味される。ヴァイオレット様やレディ・メアリーといったお馴染みキャラの人となりを踏まえた成長ぶりに頰が緩み、嫌味男バローズをめぐる話ではLGBTQが辿った茨の道を考えさせられた。TVシリーズの復活が待たれる!
野心家美女と太めのポリ・コレ青年が『プリティ・ウーマン』的に互いの欠けた部分を補いつつ、インスパイアし合う展開は、爆笑の嵐。現職を彷彿させるボンクラ大統領や隣国のイケメン(?)首相をいじったり、政治の裏側を露悪趣味的にコケにしたり。『The Interview』でS・ローゲンとの相性の良さを見せた脚本家D・シルバーマンと『ペンタゴン・ペーパーズ』脚本家L・ハナが組んだことで笑いがさらに洗練された。ほぼ完璧な美女S・セロンの突き抜けたコメディ演技がすばらしく、『スキャンダル』との合わせ技で2個目のオスカーゲットの予感。そしてS・ローゲンは相変わらずチャーミングで、男子力の高さを見せつける。
オリジナルな物語と個性的なキャラクター設定、小気味よく笑わせてくれる台詞と全てが揃っていて、イ・ビョンホン監督の才能に感動する。バカバカしいとすら思わせる設定と意表をつく展開からの怒涛のアクションに流れ込む演出も素晴らしく、全編に亘って隙がない! 役者陣は悪役も含めてしっかりと役にハマっていて、特に素晴らしいのが“絶対味覚”の持ち主で、水原カルビチキンを生み出すマ刑事役のチン・ソンギュ。厳つい顔立ちの彼はヤクザを演じた『犯罪都市』で青龍映画祭助演男優賞を受賞しているが、コメディ演技も素晴らしい! カメレオン俳優イ・ドンフィとともに今後がますます楽しみな役者だ。見終わったらチキン店にGO!