山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • ある女優の不在
    見終わると同時に、傍観する自分自身を諌めました
    ★★★★

    国に規制されながらも果敢に映画製作を続けるパナヒ監督の新作は、イランにおける女性の地位をめぐる問題に焦点を当てる。政治色を極力薄め、ほのぼのとしたユーモアを交えるパナヒ監督らしい展開で、「これ、大筋に関係あるの?」と思わせる伏線を見事に集約する。うまい! 自殺少女の安否を探る監督と人気女優の謎は案外早く解けるが、物語はそこから映画の核心にぐいっと舵を切る。テヘランである程度の自由を謳歌する二人の戸惑いと観客のそれがシンクロする仕組み。冒頭に登場する少女の率直な疑問と周囲の無理解から傍観者でいることの恐ろしさが伝わる。田舎の素朴な人々の政治への無関心ぶりも含め、自戒することが多い作品だった。

  • パリの恋人たち
    フランス、それはラ・ムールの国!
    ★★★★

    フランス人の恋愛観がわかるラブストーリーだ。恋愛関係では常に女性に主導権を握られ、女性二人に振り回される主人公アベルがどことなく滑稽だし、全員のモノローグがとてもリアル。恋人の気持ちよりも自身の感情に忠実なマリアンヌと脳内イメージと現実のギャップに気づくエヴを、レティシア・カスタとリリー・R・デップがそれぞれ好演する。特に素敵なのがレティシアで、一種の魔性の女であるマリアンヌのストレートな言動は個人的には好感度大。恋人の無茶ぶりにも唯々諾々と従うアベルでないと耐えられない? 監督&主演のルイ・ガレルがプライベートも反映したのかもと妄想しながら見るのも楽しい。

  • カツベン!
    映画と映画を愛する人へのリスペクトが伝わる快作
    ★★★★

    スクリーンに登場するキャラクターが全く理解できない言語を話していても、なんとなく意味がわかる。それが映像のパワーだと思うが、活動弁士の口上でさらに面白くなったのだなと無声映画の時代に思いを馳せてしまった。映画を愛する青年の成長と興行黎明期ならではのドラマを重ねる構成もいい。またB・キートン風のドタバタやギャグや35mmフィルムで撮ったモノクロ無声映画など、全編を通して周防監督の映画への愛情とリスペクトが伝わってくる。弁士たちの個性あふれる声色も魅力的だし、特に成田凌のカツベンぶりは気合い十分! 彼はコメディでひと皮向けたようで、ノンノボーイの先輩である阿部寛みたいになれるかも。

  • 家族を想うとき
    働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり……
    ★★★★

    映画の終盤、石川啄木の俳句が頭に浮かんだ。個人事業主という名の委託宅配で搾取される夫と心優しい妻、子供たちの日常から伝わるのは、生活費を工面するために大事なものを少しづつ失わざるを得ない庶民のリアル。薄給にあえぐ労働者階級の両親と子供が互いを思いやりながらもすれ違ってしまう現実が切なく、希望の灯すら見えない。高齢者や社会的弱者の実態にも触れていて、さすがケン・ローチ監督と思わせるシーンが多々。富豪26人の資産総額が38億人の貧乏人の総資産と同じという不均衡が成り立つわけだよな~、と苦々しい気持ちになるが、どういうアクションを起こせばいいのかもわからない自分が情けなくなる。

  • 再会の夏
    「戦争に真の勝者なし」を実感するラブストーリー
    ★★★★

    国に招集された庶民が戦地で人殺しを強いられる!? 戦争という理不尽な仕組みに組み込まれた青年はもちろん、家族や愛犬にまで雪だるま式に悪影響が及ぶ過程を描いている。ある事件の真相を探る軍事判事と被疑者である物言わぬ戦争の英雄、留置所前で英雄に寄り添う犬、美しく聡明な農婦と幼い息子というピースがしかるべき場所に収まり、完成するパズルのメッセージが心に染みる。政治家以外には戦争に真の勝者などいるわけがなく、私たち庶民は使い捨てられるだけだ。事件を解明する少佐役のF・クリュゼの生真面目で穏やかな雰囲気も絶望を絵に描いたようなN・デュヴォシェル、犬に至るまで全員がキャラクターにはまっている。

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