山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • キューブリックに魅せられた男
    名作の陰には天才を機能させた献身と忠誠心があった
    ★★★★

    予告編や字幕へのこだわりも半端なかったスタンリー・キューブリック監督を長年にわたって支え続けたレオン・ヴィターリの献身と忠誠心に涙がこぼれた。『バリー・リンドン』ではスターだったレオンが裏方に転向し、監督のアシスタント兼なんでも屋として作品に多くの貢献をしたにも関わらず何の栄誉も求めないのはなぜか? 自身を映画労働者と言い切る彼のキューブリック愛から見えてくるのは監督のリアルな姿であり、名作誕生の実態。映画ファンなら必見だろうし、キューブリック作品を新たな視点で見直す役にも立つはず。天才のビジョンは一夜にしてならず、というか天才を機能させるビロウザラインの存在を再確認した。

  • 積むさおり
    夫婦だけでなく、人間関係全般に通じる話でした
    ★★★★★

    食事中に立てる音やちょっとした仕草が気になり始め、それが相手の欠点に思えてくることってありがち。そんな誰もが経験する日常の一コマを捉え、複雑かつ微妙な人間心理を洞察した梅沢監督の視点が鋭い。女性の教官必至なヒロインを好演するのが妻の黒沢あすかなので、ご当人たちの体験も生きているのかもと思わせる。ヒロインを難聴にするきっかけが犬の散歩中に見つけた穴というくだりは、不条理文学的であり、日常が徐々に崩れていく恐ろしさをシュールな映像で見せてくれる。見終わって思ったのは、見て見ぬ振りをしながら日々をやり過ごす方が楽なのかもということ。夫婦だけでなく、人間関係全般に通じる話でした。

  • 少女は夜明けに夢をみる
    少女たちが犯罪に走った理由に憤る
    ★★★★★

    イスラム国家に不良少女がいる事実にまず驚くし、なかには殺人や薬物がらみの強盗に手を染めた子もいてかなりハード。かの国に売買春があるとは!? しかし施設に収容されている少女たちは “やさぐれ感”がなく、雪合戦で笑いこけたり、流行歌を歌ったりとあどけない。このギャップに更に驚く。編集的には唐突感を感じるシーンも多いが、監督が少女たちから引き出した痛みや悲しみは見ている側を押しつぶしそうなほど重い。少女が犯罪に走った根本的な理由に憤るしかない。家族との関係などカメラが追えない部分は想像するしかないが、少女たちの今後が気になる終わり方であった。

  • ゴッホとヘレーネの森 クレラー・ミュラー美術館の至宝
    ヘレーネの物語が知りたくなるドキュメンタリー
    ★★★★★

    評価が定まりきらないゴッホの作品に早くから惚れ込んだ富豪女性ヘレーネ。さらにはブラスクやレジェ、ピカソやスーラらの現代アートを集め、美術館を作ったのだからコレクターの鏡だ。そんな彼女とゴッホの人生を交互に描くが、比重が大きいのはやはり画家! しかし、これといった新事実は明かされず、俄然ヘレーネの人となりに興味が湧く。そういう意味では彼女の人生の掘り下げが浅く、消化不良気味だ。見終わった時、ヘレーネについてもっと知りたいと思う結果になるのが監督の狙い? 案内人ヴァレリア・ブルーニ・デデスキの語りは知性を感じさせるだけでなく、ニュアンスたっぷり。ずっと聞いていたくなった。

  • 風水師 王の運命を決めた男
    野望と陰謀を燃え上がらせる、占いの恐ろしさ!
    ★★★★

    権力闘争に巻き込まれた風水師の復讐劇は、最高の運気を宿す地相<明堂>を求める王族や深謀遠慮する逆臣の力関係の変化がドラマティックに描かれ、見ごたえたっぷり。衣装や美術も凝っているし、チョ・スンウやペク・ユンシンといった渋い演技派の熱演も素晴らしい。李氏朝鮮最後の王となった憲宗が国政にほとんど参加できなかった事実から発案した物語だが、人心を操り、野望と陰謀を燃え上がらせる、占いの恐ろしさを実感。日本にもいるらしけど、占いに頼る政治家はやはり信用できないと思った次第。とはいえ風水に従ってデスク配置した編集部の好調を見ているので、「信じよさらば報われん」ってことでしょうね。

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