山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • SHADOW/影武者
    墨絵インスパイアな映像と流麗なアクションが醸し出す美
    ★★★★

    CGI満載の『グレートウォール』で自身に失望したであろうチャン・イーモウ監督が襟を正した作品だ。残酷な場面でさえ、ある種の美しさを感じさせる芸術性豊かな1本。墨絵にインスパイアされたモノクローム映像には陰陽モチーフや墨汁で書かれた書画が散りばめられ、重要なテーマである水はスクリーンを超えてきそうな勢い。様式美溢れるアクションも健在で、刀で作った傘を使った戦闘場面がとても印象的だ。影武者となった男の悲哀、そして彼と本物の妻との微妙な関係といったドラマ部分も重厚で見ごたえあり。一人二役を演じるために増減量を重ねたダン・チャオの肉体改造も見事で、その役者魂に感服した。

  • ラスト・ムービースター
    スターの“老い”は切ないだけじゃない!
    ★★★★★

    人々の記憶から忘れ去られた老いぼれ俳優をバート・レイノルズが演じる、皮肉とも思える配役が抜群の効果を生んでいる人間ドラマ。バートの出演作や出演番組を上手に利用していて、往年のファンならニヤリのはず。スター街道を歩むために犠牲にした人生のあれこれを思い出し、後悔する場面ではバートが意外にもしっとり演技を披露する。演技力より身体的魅力が優っていた男優というイメージを覆すのが遅すぎだ。もったいない。本人に後悔の念があったのかも知りたくなった。

    先読みできるストーリーだが満足度は高い。相手役のゴス娘を演じるA・ウィンターの弾けた演技が物語の魅力的なスパイスとなっていて、目が釘付け!

  • ヒンディー・ミディアム
    どこの国もお受験で勝利するのは富裕層なのかも
    ★★★★★

    娘を勝ち組にしたい美人ママが乗り気でない夫の尻を叩きまくり、裏技を使いまくってお受験に臨む滑稽な姿を通して、インド社会の現実が映し出される。お受験が親たちの見え張り合戦になったり、貧困枠を狙いであざとい真似をしたり、親のための受験コンサルタントが活躍したり。必死すぎて笑えるが、同様の状況にある人にとっては他人事じゃないかも。清貧に生きる人々と接したプチブル夫婦が改心するくだりはファンタジーっぽいが、「人間かくあるべし」という監督の意図だろう。とはいえ、富裕層が得をする図式はそう簡単にひっくり返せるものでもなさそう。

  • フリーソロ
    クライミング界の偉業を目撃し、静かに感動
    ★★★★★

    登山道具は使わず、滑り止めチョークだけで絶壁を登るフリーソロ。命がけの挑戦を続けるアレックス・オノルドはなぜ、エル・キャピタンに挑んだのか? 恐怖を感じにくいという稀有な性格や登山ファーストの人生を掘り下げるとともに、危険な挑戦が愛する人との関係性まで危うくする側面も明らかになる。フリーソロの意義を問う恋人サンニの率直な思いに共感したが、感情抑制という鎧を身につけたアレックスのブレない姿勢に圧倒された。まさに超人! クライマー揃いの撮影スタッフのチームワークが素晴らしく、彼らによる緊迫感あふれる映像は唯一無二といえる。前人未到の偉業への挑戦が生む緊張感が最後に緩み、静かに涙した。

  • アス
    ドッペルゲンガーに会ってはいけないのね
    ★★★★★

    自分と瓜ふたつな人が世の中に3人いる、ドッペルゲンガーを見たら死ぬ、といった都市伝説にインスパイアされたようなホラーだ。デビュー作『ゲット・アウト』同様に物語トーンの定め方や伏線の張り方は丁寧で、これがJ・ピール監督らしさなのだろう。同じ存在であっても運命の転び方で人生そのものが真逆となり、不遇な人々は抱えた怒りを爆発させる機会を待ち望んでいるという設定がものすごく恐ろしい。悲惨な生活を送る黒人の怒りは、アメリカで長らく支配者階層だった白人層だけでなく、中流以上の同胞にも怒りの矛先が向けられるということなのか? SF風味は新鮮だし、先読みしにくい展開も魅力的だ。

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