略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
麻薬戦争の恐怖と復讐に重きをおくラテン気質が伝わった前作に続くのは、テロリストの入国も許すアメリカとメキシコ国境の危うさ。と思いきや、CIAの特殊作戦はそれよりもはるかに恐ろしい。人権は無視し、国際問題に発展しそうなことを次々に敢行。アメリカ国民さえ無事ならいいの、という疑問が浮かぶのは私が日本人だから? ジョシュ・ブローリン演じるCIA捜査官の判断Nにも疑問符がつきまくる。国境危険にさらされているということかもしれないが、ナショナリズムの台頭との表裏一体感は否めない。メキシコとの国境に壁を築くと主張するトランプ大統領支持者が喜びそうな映画であったよ。
穴を開けたシーツを被ったゴースト像がハロウィンの手抜きコスチュームにしか見えず、懐疑心たっぷりに見始めたけれど、実に奥深い物語だった。途中までは呪縛霊になったゴーストが人生(?)に区切りをつけるまでと思わせ、物語はやがて時空を飛び越える。この展開に違和感がなく、先が読めないのもいい。D・ロウリー監督のチャレンジ精神に拍手するとともに、人類や地球の営みを宇宙規模で俯瞰する監督の世界観にうなる。星野之宣の漫画「遠い呼び声」に通じているものがあるけど、読んだことがあるのか? C・アフレックがシーツ姿で演じるゴーストの物悲しさが伝わり、オスカー俳優の看板に偽りなし。
メンタルに問題を抱えた人が多数登場する、繊細な側面のある物語だが、現代人にとっては他人事じゃないのも事実。脚本や監督が丁寧にすくい上げる登場人物の感情もリアルで、画面にじっと見入ってしまう。なかでも惹きつけられたのが、寧子役の趣里のキレッキレの演技だ。怒鳴り、泣き、不満を垂れ流し、カミソリのようなやばい女ぶりが素晴らしい。しかも、見ていると自分で自分を持て余す彼女の辛さがじんわりと伝わってくる怪演だ。童顔だし、愛らしい顔立ちの女優だが、内に秘めたエネルギーはメガトン級。仲里依紗や菅田将暉が趣里を支える受けの演技を披露していて、ナイスサポート! 撮影や照明、音楽も素晴らしく、余韻が残る快作だ。
トラウマを抱えたぽっちゃり体型青年ダックスがストリートバスケ界で起死回生を狙う、という設定から予想できる展開通りに進む安心コメディ。彼とタッグを組む老人ドリューの人生の来し方を再訪するくだりもニンマリさせるし、ダックスの成長もわかりやすく、すべてがポジティブ。見終わって、気分爽快になるのは間違いない。凝った特殊メイクで老人に扮した現役選手K・アーヴィングはじめ、元NBA選手やWNBAの伝説リサ・レスリーが披露する華麗なプレーにうっとり。さらに演技方面でも実力発揮するのはうれしい驚きだ。とはいえシャックは相変わらずの大根!? ただ『カザーン』を使った自虐的ギャグで笑いを取ったので座布団1枚追加。
タイトルにもなった曲はオペラ的で、艶やかで、華々しく、ロックの概念に風穴を開けた名曲。そんな曲を作ったフレディ・マーキュリーをR・マレックが熱演する。カリスマティックな天才という難役だが、マレックが彼独特の個性をちゃんと反映させているのは素晴らしい。「クィーン」の紆余曲折やメンバー間の確執と和解などは知られている逸話の組み合わせだが、そこが青春ドラマっぽくて個人的には共感度大。ラストは心の中でガッツポーズ! B・シンガー監督はフレディのセクシュアリティに比重を割きすぎだし、事実と違うのではと思う部分もあったが、B・メイがプロデューサーなのだからと納得。もちろんサントラが欲しくなります。