略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
元CIAのワンオペ仕置人が悪を成敗する痛快作からは、D・ワシントンとA・フークワ監督のバディっぷりが伝わってくる。アパートに住む少年との父子関係にも似た友情や主人公マッコールの過去を知る人々を登場させたことで主人公の人間性が前作より濃くなっているのも魅力のひとつ。デンゼルはアクション場面では64歳には思えない動きを見せるが、戦う前に時計を見るマッコールの癖だけは理解不能。戦闘後には時計を見ないし、そもそも19秒で敵を倒してない!? 宣伝コピー、変じゃね? 本筋とは関係ない逸話が加えられているが、殺伐としたマッコールの人生にちょっとした灯をともす、心温まる感じがすごく好き。
恋人が実は大富豪の御曹司!? 女性ならうっとりの設定だが、玉の輿婚って本当にハードルが高いなと思わせられた。彼ママや恋人の元カノたちの妨害工作やディス、家柄自慢が恐ろしく、愛と家柄の間で悩む恋人たちに深く同情。ヒロインが体験するカルチャー・ギャップは欧米VSアジアを超えた<名門VS庶民>であり、個人の資質を認めない旧弊な考え方に辟易することも。微妙な顔立ちのC・ウーがヒロインにぴったりで、モデルのような美女軍団に負けない才気を発散。そして、要所要所をしっかりと締めてくれたM・ヨーは相変わらずエレガントで素敵。彼女自身の生い立ちに近い役だけに、本当にはまり役だった。
音に反応する“何か”と対決するアボット一家のサバイバルを描くSFホラーは、最初から最後まで一気呵成に見せるパワーに満ちた傑作。幼子が襲撃されるショッキングな冒頭で興味を引き、壁に貼られた新聞記事や家長リーが焚く狼煙といった形で世界状況を完結に説明。日常に潜む小さな危機を描きながら、一家に迫る脅威への恐怖を煽る演出が素晴らしい。登場人物が声を出しそうな場面で何度、自分の口を押さえたか。“何か”の小出しもスリリングだし、子を思う親の愛情が伝わってくる場面では涙。TVシリーズ『The Office』時代は木偶の坊キャラかと思っていたJ・クラシンスキーの才能がついに開花した。
厳しい受験戦争を勝ち抜けば幸せを掴めるという神話じみたアジアの学歴社会に一石を投じる、苦い青春ドラマだ。勉強嫌いの同級生に頼まれた天才少女リンが次々と驚異のカンニング・テクを駆使し、バイト料もゲット。こう書くと『ザ・カンニング【IQ=0】風だが、全然違う。本作が描くのは、蔓延するスクール・カーストや脱貧困を目指す少年の葛藤、特権に甘んじる富裕層キッズの傲慢だ。舞台はタイの高校だが、世界中のティーンが共感するに違いない。実際に起きた不正入試事件を元に、関わった若者たちの心情や状況を深く洞察した監督の想像力の勝利だ。リン役のチュティモンちゃんは演技がうまく、女優デビューとは思えない存在感が光る。
一軒家で暮らす作家トン子を軸に人生に迷っている女たちの物語が綴られるのだが、「こういう人、知ってる!」と大いに納得の女性が次々に登場。「私は安いひき肉」と自虐したり、ストーカー?と不安になるような女性も登場するが、それぞれが着地点を見つける過程には過剰なドラマはなく、「ありそう」と思わせるのがいい。胆力の原点として描かれる料理もすごく美味しそう。なによりも気に入ったのは、女優たちの台詞回しがとても自然なこと。人気女優の競演だが、座長の小泉今日子のムード作りが巧みだったと思わせ、楽しい女子会に参加したような気分になる。それにしてもキョンキョンは本当に上手に年を重ねているな~。