中山 治美

中山 治美

略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。全国商工新聞、月刊スカパー!(ぴあ)、時事通信などに執筆中。

近況: 映画祭で国内外を飛び回っているうちに”乗り鉄”であることに気づき、全国商工新聞で「乗りテツおはるの全国漫遊記」を連載。旅ブログ(ちょこっと映画)もぼちぼち書いてます。

サイト: https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

中山 治美 さんの映画短評

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  • 春画と日本人
    ここにも不自由展
    ★★★★

    わいせつか?芸術か? 映画界でも他人事ではないが、時代を経て基準が変化してきたのも事実。だが北斎が手掛けていても春画のハードルは高いようだ。本作は大英博物展で好評を得るも、著名な公私立博物館での里帰りは叶わなかった春画展開催の顛末を検証する。背景にあるのは自主規制。そこは想像通りの展開なのだが、本作を魅力的にしているのが日本開催を実現させた先生方。まぐわいの構図の素晴らしさ、擬態語の豊かさなど春画に込められた技術の粋を当たり前だが大真面目に語る。中でも陰毛。現役の彫師でも繊細さを再現するのは難しいという。これは「日曜美術館」ならぬ「大人の美術館」。美術史的にも価値あるドキュメンタリーである。

  • 韓国VS.北朝鮮のスパイ戦を描いた映画はこれまでにもあったが、”北風工作”とはまた新鮮。選挙前、現政権を維持する為にスパイを使って北朝鮮から武力挑発してもらうよう働きかけるのだが、その時に放たれる台詞にシビれる。”国が揺れれば、与党に票が集まる”。大衆心理と政治の本質を一言で表現した脚本の秀逸さ。実話をヒントにしているとはいえオリジナル脚本で、監督自身が共同脚本も兼ねている。ここに韓国映画界の底力を感じるのだ。
    翻ってその台詞は、今の日本の政治にも通じる。情報&印象操作に振り回されず、今の社会を見つめる為にこれほど参考になる映画があるだろうか。今見るべき1本である。

  • 帰れない二人
    中国版”極妻”
    ★★★★

    昔、監督にチャオの起用理由を尋ねると、既成の女優にはない自然さだと語っていた。その素朴さは地方を舞台にした監督の作品に合っていた。だが、コンビを組むこと早約20年。いまや国際派女優となった彼女は、役を演じるようになった。それは若干寂しくもあるが、本作で見せる貫禄もまた彼女が自然と身につけたもの。それが本作には合う。
    ヤクザな男に惚れたが為に翻弄され、何度裏切られても手を差し伸べずにはいられない本作のチャオの人生は、まさに東映”極妻”の世界。ジャ作品お馴染みの移りゆく中国社会を映しだしながら展開する義理と人情とキケンな香りに、日本の映画界が失くしたものを見るかのようで郷愁すら感じるのである。

  • おしえて!ドクター・ルース
    2人のルースが存在するアメリカに乾杯!
    ★★★★★

    『RGB 最強の85才』の最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグと、90歳のセックス・セラピストが同時代に活躍している米国って?? 改めて民主主義国家が育んできた歴史の重さを実感するだろう。しかも本作で明かされた彼女の生い立ちは、多くの移民が辿ってきたであろう道。1人の半生を紐解きながら移民政策、さらには中絶禁止法といった現政権が抱える問題を巧みな構成で観客に提示する。女性の生き方を通して社会を描き続けてきた監督の視点が生きている。そして「バリバラ」の2.4時間TVでも実証されたが、性の悩みを解決することがいかに人の人生を救うか。2人のルースのいる米国に羨望を抱かずにはいられない。

  • ディリリとパリの時間旅行
    美しきアニメで描く、パリの光と陰
    ★★★★★

    『この世界の片隅に』が若者の戦争への関心を高めたように、アニメは目を背けがちな歴史を幅広い観客に伝える力がある。本作の場合は列強が行っていた植民政策の非人道的な行為であり、今も通じる男尊女卑社会。とりわけニューカレドニアのディリリが、パリ万国博覧会で人間動物園の見世物となっている場面は強烈だ。しかし彼女は自分が置かれている境遇を意に介さず、人助けの為にパリの街を駆けめぐる。それはあたかもひとときの夢のようであり、当時パリの華やかな一面を見ることなく去った人たちへのオスロ監督からのプレゼントだろう。それにしても映像の美しさたるや! 76歳にして新たな表現方法の追究をやめない鬼才にアッパレ。

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