略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
“嘘つき”というレッテルを貼られた人間に対する、好ましくない印象を逆手に取った巧さ。原作のそんな要素を生かしながら、サスペンスフルな群像劇を展開させる。
就職試験のゲーム的な要素、そのゲームがもたらす6人の結束の破綻、あぶり出される六六者六様の過去。それらを絡めつつミスリードをまぶした展開の妙。大企業のえげつなさや就活の残酷性を匂わせつつ、青春ドラマに着地させた点が面白い。
原作小説の文章表現の妙を映画で再現するのは困難と思われたが、カットのつなぎのスピード感や音楽の配置の巧妙さを生かすなどの工夫は買い。俳優6人の演技が織り成す舞台劇のような緊迫も味。
バイク乗りを主人公にして、1960年代の自由とその終焉を描く。『イージー・ライダー』をほうふつさせる、こんな硬派な物語が21世紀に生まれたことが嬉しい。
人と人がきちっと向き合えた時代の人間関係。そこには愛や友情、結束もあれば暴力や卑劣もある。J・ニコルズ監督らしい、そんなむき出しのドラマに、人間の本質が浮かび上がる。
時代の遺物と化すことを宿命づけられた、バイカーたちを演じるA・バトラーやT・ハーディの好演にも魅了された。人と人が直接向き合うことなく匿名でイージーライドできるSNSが一般化した現代に、この映画はどう映るのだろうか?
辛うじて黄金時代に足をかけていた前作の帝政ローマ。そこから斜陽まっしぐらの時期を背景に、新たな剣闘士のドラマを紡ぐ。すなわち、前作以上に大衆がヒーローを求めている時代の話。
民は飢え、帝政への不満は高まり、国家は破綻寸前。そこで暗躍する有象無象を描きながら、ひとりのグラディエーターの生を中心に置く。前作に比べて、おとぎ話性が増したが、希望が見えにくい時代に、この物語はある意味タイムリー。
前作同様CGに頼ってはいるが、セットは壮大になり絵的な迫力を増した。インフレを考慮しても大幅増の、前作の推定2.5倍の製作費が、それを物語っている。
2時間を超える長尺だが、それが気にならないジェットコースタームービー。『ジュマンジ』シリーズ近2作を手がけたJ・カスダン監督がまたもD・ジョンソンと組み、良質のエンタメ作品を放った。
バディムービーとして単純に楽しいが、ディテールもゴージャス。北極にあるサンタクロース本拠地の省庁的システムや、プレゼントをもらえない“悪い子リスト”の存在が物語を面白くする。
ドウェインはいつもながらに、力技とユーモアで魅力を発揮。確固たるクリスマス哲学を持ち、聖夜のために筋トレに励むサンタにふんしたJ・K・シモンズの妙演にも注目したい。
人間が動物に変異する、奇病が広まる世界。そこから話をどう広げるか? ホラーとしてつくる道もあっただろうが、“それが現実の世界で起こったら?”というリアルな視点で物語を紡ぐ。
愛する家族がこの奇病に冒されたら、それは悲劇だ。しかし本当に悲劇なのだろうか? そもそも、それを病気と断じてよいのか? 本作を観ていると、そんなさまざまなことが頭をよぎる。
監督はコロナ禍のときに本作のアイデアを思いついたとのことだが、本作はパンデミック初期の過剰な恐怖の反応を連想させる。警戒は必要。しかし未知のものを恐れるな、向き合えーーそんなメッセージが聞こえてきた。