ウィキッド ふたりの魔女 (2024):映画短評
ウィキッド ふたりの魔女 (2024)
ライター5人の平均評価: 4.4
ドリーミーなだけではない、魔女の本気
まずミュージカル映画の絢爛豪華な旨味を堪能できるのが魅力。『オズの魔法使い』の世界と地続きのカラフルかつポップなビジュアルが、歌とダンスの圧倒的なスペクタクルと一体となった。とりわけ、回転書棚がある図書館でのシークエンスは映画ならではの視覚効果が生きて圧巻。
一方でエルファバの姿勢にファンタジーでは片づけられない、現代社会へのメッセージが宿る。体制による“分断”への問題提起が、硬派な魅力を宿らせる。
エルファバにふんしたC・エリヴォのヘビーな歌声も、グリンダ役のA・グランデの軽やかさも映え、オズの国に引き込まれる。早く続きを観たい。
“ポッタリアン”にも刺さりまくるはず
160分の長尺のうえ、タイトルに堂々登場する「Part1」に尻込みしてしまいそうだが、制作発表から12年余りの開発・製作期間を経たブロードウェイ・ミュージカルの映画化だけに、いろんな意味で見応え十分。とにかく「オズの魔法使い」云々より、“ポッタリアン”に刺さりまくる魔法大学における愛と友情物語が展開され、キアラ・セトル演じる校長など、映画オリジナルキャラも違和感なく盛り込まれている。そして、ファン待望の映画初出演となるアリアナ・グランデは、堂々の貫禄で作品を引っ張るだけでなく、天然キャラのグリンダを完全にモノにしており、彼女を観るだけで入場料の元は取れると断言!
ときめく時間が過ぎていき、欠点が見つからない最高の映画化
2部作に分けたことに賛否あるも、結果的に最も聴き応えあるナンバー「ディファイング・グラヴィティ」が異常レベルのカタルシスをもたらすことに。
冒頭から、めくるめくビジュアルの洪水を体感。ジョン・M・チュウ監督が『イン・ザ・ハイツ』の経験も生かした、ミュージカル映画王道の編集とカメラワークで魅せ、合間のドラマもテンポ良し。キャストの力量もあって長尺を感じず。回転セットを使った「ダンシング・スルー・ライフ」のシーンなど、2回目に観た時の方が細部の動きまで感動が大きかった。
86年前の『オズの魔法使』へのわかりやすい描写から超マニアなネタに至るオマージュの数々は、映画の歴史へのリスペクトで感慨無量。
フィクションの持つ力を見せつける
フィクション、虚構の持つ力を見せつける。風景も建造物も衣装も、人物像もストーリーも、ド直球のおとぎ話仕様。いかにもファンタジーらしい華やかな色と形が次から次へと現れて魅了する。原作のミュージカル舞台らしい"作り物感"は維持しつつ、映画ならではの演出がたっぷり。1つの曲を多様なシーンを組み合わせて構成、遠景の向こうにまた別の風景を展開させて世界の広さと奥行きを創出、室内を映す時にもカメラが空間を360度縦横無尽に動き回る。
物語は普遍的。変わり者扱いされてきたヒロインが、初めて友だちを得る嬉しさ、初めて自分の力を認められる喜び、その力を解放するときの歓喜が、画面から溢れ出る。
夢と魔法の世界への旅へ
同題ブロードウェイミュージカルの待望の実写映画化作品のパート1。違った出自を持った二人の女性の友情の物語であり、希望と挫折の物語。何と言ってもメインの二人、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデが素晴らしい。二人のフレッシュさが映画を牽引し続けてくれます。共演陣で言えばジェフ・ゴールドブラムとミシェル・ヨーは流石の貫禄です。映画だからこそできた魔法の世界の描写、そして魔法の数々の描写、久しぶりの大掛かりなファンタジー大作を堪能することができました。今年11月公開の後編にあたる『ウィキッド:フォー・グッド』が今から楽しみです。