略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
プロの殺し屋の立ち回りを、D・フィンチャーが観察者の冷徹な視点で描く。そこに殺し屋への共感がないのがミソ。
暗殺者哲学を含め、成功率100%の秘訣を延々と語るオープニングの主人公の独白から一転、たった一度のミスで物語は動き出し、プロフェッショナルと思われた殺し屋の本質が暴かれていく。ティルダ・スウィントンふんする同業者が話す寓話が興味深い。
主人公の内省にスポットを当てているのは、彼が愛聴するザ・スミスの楽曲からも明らか。モノローグとヒンヤリした映像の質感のハードボイルドな雰囲気に引き込まれ、一気に見てしまった。力作。
亀梨和也の鋭い眼光が、そのまま映画のまなざしとなっているような、危険な空気感。血塗られたバイオレンスを含めて、三池監督らしいヤバい映画を久しぶりに見た気がする。
猟奇殺人事件の謎に、人体実験を思わせる過去の秘密の出来事が重なり合うミステリー。それらを背景に置きながら、頭の切れるサイコパス同士のバトルが展開するのだから、物語のスリルは加速する。サスペンスとしても見応えあり。
亀梨はもちろん、盟友の犯罪者にふんした染谷染谷将太の怪演も光り、俳優陣が醸し出す緊張感もなかなかのもの。目の離せない、ギラついたスリラー。
異星からの難民Xが社会に潜んでいるという設定。物語はミステリアスではあるが、見進めていくうちに、それはどうでもよくなる。
Xは人間に擬態して暮らしているので、誰がXなのかわからない。X自身でさえ、自分を人間と思い込むこともある。そんなXに対して向けられる偏見やヘイトを、台湾人留学生という日本で差別されるキャラを置くことで重層的に表現。これは巧い。
政治家に外国人差別をあおられ、メディアがその尻に乗っかり、パンデミックや戦争でさらにそれが加速してしまった日本の現状にもリンクする。日本人は“心”で他人と向き合っているのだろうか? そんなことを考えさせる、愛すべき愛すべきファンタジー。
愚かでしかないコミュニティの分断を、ナンセンスなギャグとともに笑い飛ばした、そんな前作のノリを踏襲する続編。
埼玉県民の一家がカーラジオで聞いている都市伝説のビジュアル化というフォーマットは前作と同様。埼玉から関西圏へとエリアを拡大し、“お国自慢”ならぬ“お国自虐”をさらに多角度から展開する。スケールの大きさを含め、前作のファンの期待に応えるつくり。
くだらないと言ってしまえばそれまでだが、むやみにアツくなるエピソードもあるし、ヒエラルキーにとらわれがちな社会の現実も見えてくる。悪役設定は某政党への風刺!?
本能寺の変を核とするおなじみの戦国ストーリーも北野監督の手にかかると、予測不可能の面白さが。
あっけない死という北野流バイオレンスは刀を主要な武器にすることでざっくり感を増す。一方で、監督自身が演じる秀吉と側近たちのやりとりはユーモア全開。“らしさ”が詰まっている。
何よりの“らしさ”は、腹に一物を抱えた人々の群像。時代考証を気にしていないのは実年齢にそぐわない武将たちのキャスティングからも明らかだが、そこに同性愛の要素も加えて、さまざまな欲望と思いを交錯させる。狂気の戦国絵巻として楽しんだ。