略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
幻想と現実が入り混じる『インセプション』的な世界観に、同じB・アフレック主演の『ベイチェック/消された記憶』の“脳いじり”要素を溶け込ませ、とんでもないスピードで物語を紡ぐ。
説明的なセリフが多く、絵的なスペクタクルも詰め込まれ、それでいて90分の尺なのだから物語のテンポの速さは想像できるだろう。次から次へと意外な事実が発覚し、先読みを裏切られる、それこそが最大の妙味。
後半に“いくらなんでも……”と思える展開はあるが、R・ロドリゲス監督らしいB級テイストと思えば、すんなり飲み込める。W・フィクトナーの正しいヴィラン活用を久しぶりに見た気がする。
サスペンスと思って見始めたら『砂の女』のような不条理を帯びていき、シリアスなメッセージへとたどり着く。そんなユニークな一編。
奈良でロケをしたという山中の生命力あふれる風景に、物言わぬ女性たちの神秘性が折り重なり、ファンタジーを構築。そこに人間と自然の共生というテーマを浮かび上がらせる。
自然環境に対してマクロの視点を得ていく男とミクロ視点から脱せない男の対比も面白く、トランプ政権以後顕著になった後者の台頭が現代とも重なり、興味深く見た。昆虫が頻繁に登場し、ラストで「カノン」が流れるせいもあり、戸川純の「蛹化の女」を連想。
『ローグ・ワン~』以来7年ぶりのG・エドワーズの新作ということで期待していたが、それにたがわぬ内容。
進化したAIの受容をめぐる東西世界の対立。そんな近未来シミュレーションのち密さに加え、舞台となるニューアジアのビジュアルの作り込みも素晴らしく、どっぷりとSF世界に没入できる。『ローグ・ワン』組のスタッフも多数参加しているが、物語的にも同作との類似点を多く見て取れた。
もちろん、新味もある。主人公の失われた恋をベースにした喪失と追求のドラマは、『ローグ・ワン』以上にエモーショナル。人間味の深みに味わいがあり、SFとの巧みな融合に唸った。泣ける!
名士ヅラして搾取する人々の蛮行という構図は、ある意味スコセッシらしいギャング映画。この骨格に、ファンとしてはグッとくる。
野心的に上へ上り詰め、失墜し、すべてを失う者のドラマは力強く、歯応え十分。ネアンデルタール風にやたらとアゴを突き出し、思案や苦悩を表現するディカプリオの熱演も光るが、やはり黒幕的なデ・ニーロの重厚さに目が行ってしまう。
『グッドフェローズ』や『ギャング・オブ・ニューヨーク』の構成も連想させるが、そこに先住民への反人種差別的なメッセージも込められ、さらにはアメリカの罪をも重ねてくる。そんなスコセッシの円熟にシビレた。
政界スキャンダルを題材にしたドラマながら、100分ちょっとという短さ。原作の政争パートを飲み込みやすく刈り込み、サスペンスのテンポアップを図った工夫は買える。
政争以上に重きを置いたのは謎解きに加え、事件解決に臨む若き主人公の成長。推理力はもちろん、駆け引き上手なところも見せ、何者でもなかった議員二世の政治力の覚醒が見えてきて面白い。
尺を長くして政治家の悪しき部分を赤裸々に描いて欲しかった気もするが、“おまえの罪を告白しろ”と問いたい議員が続出する現実にあって、ある意味、タイムリーな娯楽作ではある。