略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
敵だらけのアフガニスタンからの脱出を図るCIA工作員の奔走。G・バトラーがこの主人公を演じるとなれば、アクション色が濃厚になるのは想像がつくが、それだけに終わらない妙味がある。
主人公と逃避行を共にするのが現地通訳を務める米在住アフガニスタン人で、たがいに理解を深めていく展開が面白い。思想や目的の違いで険悪になりもするが、帰国という共通の目的で結ばれた彼らの共闘は、シリアスなバディムービーの様相を呈する。
ガザの戦乱がニュースになっていることもあり、過激派、体制派、日和見派、穏健派などなどが入り乱れる、複雑なイスラム世界の一端を知る上でも見ておきたい力作。
ネット上の悪意を描いたスリラーは今や珍しくはない。本作もそんな一作……と途中までは思っていたが、そんな予定調和で完結することはなかった。
この世を支配しているかのように振舞う裏配信サイトのホストのマウントに、同調してコメント欄で叩く視聴者の傲慢。序盤はそんないやらしさをこれでもかと描き、見るものの胸のムカつきをひたすら高める。腹立たしさを恐怖に転化した面白さ。
が、結末では意外な秘密が明らかにされる。詳細は省くが、物語の意外性に加え、イビツな道徳性には『ソウ』に似た要素が宿っていた。この映画の刃は、ネット動画を無責任に面白がっている社会に向けられているのだ。
『ラ・ヨローナ~』に『死霊館』3作目と、このユニバースの作品を立て続けに手がけてきたM・チャベスが“シスター”の続編にも進出。この流れから察するに、彼がユニバースの今後を担うことは容易に想像できる。
前回の“シスター”の物足りない点であったヒロインのドラマを、チャベスは前作のセリフにヒントを得て補強。結果、悪魔と戦うヒロインの芯の強さが強調された。前作以上に面白くなった理由はそこにある。
もちろん前作の売り、すなわちショックホラーの魅力も増強。巻き角を持つモンスターの出現はスピード感もあり、怪物好きの筆者としてはエキサイトさせられた。次が早く見たくなる!
G・リッチー作品では『ロック、ストック~』等の初期作品に回帰したようなアップビートとユーモア、スリル。そこに『コードネームU.N.C.L.』的スパイ活劇の妙を絡めた点が面白い。
物語自体は諜報劇だが、とにかく笑えるつくり。ステイサムの初登場シーンからして吹き出すし、彼と共演者とのかけあいもコミカル。とりわけヒロイン、A・プラザの艶笑や映画スター役のJ・ハートネットのおとぼけが効いている。
ツッコまれ役の無骨なステイサムは扇の要に位置するものの、基本的には『ロック、ストック~』的群像劇スタイルのキャラクター配置。憎めない武器商人役でおいしいところを持っていくH・グラントにも注目。
フェイクドキュメンタリー形式でコメディを組み立てつつ、群像ドラマを成立させる。簡単そうで意外に難しい、そんな挑戦に取り組んだ本作。
まず、キャンプに集う子どもたちの表情がイイ。大人たちの事情もつゆ知らず、ミュージカルの上演に打ち込みつつも、ふと気の抜けたところを見せるのがチャームポイント。キャンプのスタッフら大人たちも、ある意味、子どもっぽくて、それぞれにイイ味を出している。
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のスタッフが多数関わっていることもあり、同作のようなリアリズムや手作り感がにじむ。低予算だが愛すべき逸品。