略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
原作の読者なら、壮大な物語を2時間弱の尺で、どこまで映画化できるか気になるところ。結論から言えば、原作の3、4巻を組み合わせて物語を締める格好となった。
核兵器を搭載している(かもしれない)原子力潜水艦を日本の反乱軍人が占拠。その目的が核による平和維持なのだから、ロシアの核攻撃に世界が怯える現代にはタイムリー。核は必要なのか? 問題提起という点では、本作の持つ意味は大きい。
3時間の大作として作り、もう少し先の物語に踏み込んで欲しかった気もするが、そこは続編に期待しよう。同じく軍事サスペンス『ミッドナイト・イーグル』以来の共演となる大沢たかおと玉木宏の顔合せに、個人的には胸アツ。
リンクレイターの長編作品は、ほぼすべてが市井の人間のドラマであり、観客としては入り込みやすかった。が、本作は当たり前のように南極旅行を計画してしまうリッチな家族の物語。それがどう出るのか?
マイクロソフトで開発者として活躍する夫と、建築家として注目を集めるも結婚でキャリアを捨てた妻。そんな彼らの自分探し、ひいては共有していたはずの愛情を取り戻す過程が描かれる。丁寧でテンポの良い描写はリンクレイターの職人芸と言えよう。
正直セレブ臭が最後まで消えなかったが、それでもブランシェットの熱演はいつもどおり圧倒的。子どもが大人に“気づき”をあたえるリンクレイターらしいテーマも光っている。
アガサ・クリスティ原作の名探偵ポアロものである以上、オカルトはありえない。しかし、オカルト的な出来事が次から次へと起こる。その秘密を解き明かしていくのが、本作の妙味。
原作を大胆に翻案し、ベネチアの古い屋敷に舞台を限定。そこでは殺人事件が起こるばかりか、幽霊が現われたり、怪現象が起こったり。いったいポアロは、それらをどうやって科学的に解明するのか? 最後まで、そんな興味は潰えない。
ホラー風の演出も効いており、ブラナーのハリウッドデビュー作『愛と死の間で』を連想させるタッチ。怖い映画好きとしては、こんなポアロも大歓迎だ。
ジョン・レノンがプラスティック・オノ・バンドを率いて、ビートルズ以外で初めてステージに立ったフェス。それだけでも1969年トロントでのイベントは伝説的だが、話はそこで終わらない。
23歳と22歳の若者ふたりが企画したという事実に驚かされ、ロックの創始者たちを讃える趣旨に、なるほどと思わされる。ジョンの映像はすでに発表済みだが、チャック・ベリーをはじめとするレジェンドたちの映像は貴重だ。
ジョンのステージで金切り声を上げるヨーコに観客が引いていたというエピソードも聞けるが、ビートルズを期待した観客には無理もない。ともかく、ユースカルチャーの成熟と時代の熱を感じ取れる音楽ファン必見作。
オレオレ詐欺は日本全国をターゲットにしているが、大阪に舞台を限定し、詐欺集団の拠点として西成を設定。このつくりが面白い。
ほころびから崩壊していく詐欺集団の面々が、府警の監視の目を縫って、それぞれどう生きていくのか? 緊迫したサスペンスの中にも、関西弁のセリフ特有のユーモアが宿り、魅入ってしまう。
底辺の人間が生きていくのは大変……という大前提をベースにして生のエネルギーを活写。原作では男性だった主人公を女性に変換する原田監督の剛腕演出はもちろん、飄々としつつ、やるときはやる主人公にふんした安藤サクラの“顔”もインパクト大。彼女と、狂気の山田涼介の対比も絶妙だ。