略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
韓国製アクションにしてはエモさ控えめで、尺も手ごろな95分。それでもというか、それだからか、ともかく夢中になり一気に鑑賞。
少女を人身売買組織から救おうとする主人公の奮闘。『96時間』的な物語をソリッドに突き詰め、『ジョン・ウィック』風の肉体的ガンアクションを叩きつける。スタントにもこだわりが感じられるが、エンドクレジットでフィーチャーされるメイキングからもそれが伝わるだろう。
凄腕の殺し屋ながら妻には頭が上がらない男という主人公にふんしたチャン・ヒョクはハードなスタントはもちろんだが、ユーモラスな個性も生き好感度大。
映像やドラマの構造が微にいたるまで計算されており、賞レースを賑わせたのも納得。
父と娘の愛と葛藤はホームビデオのコラージュによって美しいタペストリーを織りなし、一方ではカラオケの場面に代表される心理的緊張を浮き彫りに。感情の複雑なもつれを、いかにリアルに描きながらハッピーエンドに導くか? その点でも意欲作的な作品。
繊細さゆえに少々息苦しくも感じるが、思春期特有の愛と性への憧憬のみずみずしい描写により、それも緩和されるだろう。完璧ではない父親にふんしたP・メスカルの、オスカー候補も納得の好演も光る。
ブラムハウスの人種偏見スリラーというと『ゲット・アウト』が思い出されるが、ある意味、それよりもはるかに恐ろしい。
ごく普通に見える白人女性たちの集まりが、少しずつ人種偏見で結ばれていることが明かされる。不穏な空気の高まりは、やがて殺人事件へと発展し、取り乱した彼女たちの怒鳴り合いへ。90分ワンカットのリアリティもあって、緊張感は尻上がりに高まる。
“西欧文明は白人が作った。なのに他民族に侵食されている”という閉鎖的な考え方。それが日本に住む日本人にとって無縁の問題ではないことは、入管法の論議からも明らか。ビビりつつも、考えさせられる力作。
前作『The Witch/魔女』の原題には“Part1”と打たれていたが、そういう意味では出るべくして出た続編。
前作はドラマから壮絶バトルへと発展したが、本作では人間ドラマとバトルを並行展開させる。ヒロインをかくまう姉弟のやさしさや、弟とのほのかなロマンスが人間味として生き、またヒロインの大食いという設定が笑いを誘う。
とはいえ、サイキック対決は前作以上に壮絶で、血糊たっぷりのバイオレンスも健在。前作とのリンクを本格的に示した結末にふれれば、製作されるであろうPart3が楽しみになってくるに違いない。
トッド・ブラウニングの『フリークス』に敬意を表しつつエンタテインメントに昇華する、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のG・マイナッティ監督のイイ仕事。
サーカス団員たちのめくるめく芸から虐殺へと展開するオープニングからして吸引力はすさまじい。そこに絡む“異形の者”たちの物語。悪の側のナチスもそうだし、そのナチスに認められない悪役の異形っぶりも面白く、“まとも”の概念が狂ってくる、
監督は女性映画であると語っているが、結局のところ、いちばんまともなのはヒロインの電流少女ということか。彼女の“覚醒”に軸を置いた点にシビれた。しれーっと響く”クリープ"も効果的で技あり。