略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
『アベンジャーズ』『ソー』シリーズを除けば、劇場版ではじつに6年ぶりの新作。そして待った甲斐のある快作!
前2作では結果的に銀河を救う、落ちこぼれたちの英雄談だったが、今回のミッションは仲間ロケットの救助が最優先。動機としてわかりやすいし、必然的に物語もエモくなるが、そこはガーディアンズ、笑いを絶やさない。より週刊少年ジャンプっぽさを増したというべきか。
ガン監督の前作『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』にも通じる弱者への目配せも嬉しく、しっかり泣かせた。90年代の楽曲もシリーズで初めて混ざってきて、いろいろグッとくる。
ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』から発想を得て、スコリモフスキがそれを現代に置き換えて描いた……というべきか。
とくにブレッソン的なのは人間の描写のリアリティ。流浪のロバに優しい者もいれば、乱暴な者もいる。思想や道徳、宗教、狂騒、争い……そんな人間社会を、物言わぬロバはただ見ているのみだ。
ロバ視点の映像が時折挿入されるが、その美しさが、またいい。そもそもの相棒であったサーカスの女性芸人との交流が回想的に挟まれるのも味。ラストの、とある“音”が想像力をくすぐる点も巧い。
NYの下町にカメラを向けたときのJ・グレイ監督の味を久々に堪能した。そして、その味はやはりビター。
主人公は反抗期のユダヤ系少年。彼と家族、黒人少年との絆や葛藤のドラマは、グレイの自伝的な物語ということで、リアルな視点で語られる。その過程で少年はほろ苦い体験をするが、A・ホプキンスが扮する祖父との交流に希望が見えるのがいい。
“アルマゲドン・タイム”はレゲエの名曲で、本作ではクラッシュによるカバーを起用。レーガン政権が始まった1980年代を時代背景にしているが、物語はトランプの時代にまで目配せする。“アルマゲドン・タイム”とはドツボの少年期代に加え、そんな保守の時代をも指すのだろう。
まずはC・ブランシェットの圧倒的な演技に触れないといけない。ドイツ語とピアノをマスターし、タクトを含めて完璧な指揮者になりきり、カリスマ性やプライド、欲望をも体現。他の役者なら、ここまで強烈なキャラになっただろうか?
主人公は見るからに完璧主義者だが、その完璧がほころび、崩壊する過程をたどる。クセのあるキャラに囲まれ、ジワジワと追い込まれる、そのさまの緊張感に引きずり込まれる。
貧乏ゆすり、呼鈴、メトロノーム、悲鳴などに神経を逆なでされるのはヒロインだけでなく、観客も同様。結末も含め、底意意地の悪い(?)T・フィールズ演出に唸らされた。覚悟して見るべし。
『パラサイト 半地下の家族』と同様に、ベースとなっているのは格差社会の現実。そこに高速道路のホームレス家族という設定を加えた点が絶妙。
なるほど、高速のサービスエリアには人が集まるし、食べ物にも困らない。そんな環境下で明るく逞しく生きていく家族にも変化のときが訪れるのだが、そこがドラマ的に面白く、無邪気な子どもたちがこの“変化”に説得力をあたえる。彼らを迎え入れた初老夫婦のキャラにも人生の機微が見えて、グッとくる。
これがデビュー作となるイ・サンミン監督は各キャラクターの人間性を損なうことなく、味のある悲喜劇を積み重ねた。これは巧い。