相馬 学

相馬 学

略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。

近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。

相馬 学 さんの映画短評

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  • フラッグ・デイ 父を想う日
    いい具合に枯れたペン節に男泣き
    ★★★★

     『インディアン・ランナー』の犯罪劇的なスリルに、『イントゥ・ザ・ワイルド』の米国原風景への回帰が融合したというべきか。国家vs個というテーマを含め、S・ペンが取り組みたい題材であるのは明白。

     新味は無軌道な父親の暴走と、彼を憎みたくても憎めない娘の葛藤を、軸に置いたこと。父を罵り、冷たくするも、なお切れない縁を、ぎりぎりのレベルで描いた点にペンの意欲を見る。

     ペン親子の共演も説得力の点で効果を発揮し、涙を流す場面の画力には凄まじさを覚える。ペンの盟友ともいえるエディ・ヴェダーが提供した、楽曲の切実な響きも忘れ難い。映画人としてのペンの、味のある枯れ具合が、なんとも言えずシミた。

  • ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY
    彼女の歌は、何を伝えたかったのか?
    ★★★★★

     80年代を知る者としては歌を含めて懐かしく見たが、ノスタルジーだけでは済まないドラマの面白さも味。

     同性の恋人との葛藤、父親との愛憎、一見ドライだが実は深いビジネスパートナーとの絆、夫ボビー・ブラウンとの破局へと向かう道程。ホイットニーを中心にした人間関係が細やかに描かれており、ときに高揚し、ときに悲しく切ないドラマの抑揚に魅了される。

     全体を俯瞰すると伝えたいテーマがボヤケており、『ボヘミアン・ラプソディ』のような熱が感じられないのは少々残念。歌唱シーンの大々的なフィーチャーから歌いたいという熱意は伝わってくるが、それが物語と連動しきれていないのが歯がゆい。

  • Never Goin' Back/ネバー・ゴーイン・バック
    どん詰まりの日々に、彼女たちは戻らない……のか!?
    ★★★★★

     『SPUN/スパン』を彷彿させる麻薬と金欠のはきだめにハイティーン女子ふたりを置き、タメダメな日常を描く。

     見ていて歯がゆくなるほど誘惑に弱いヒロインたちが憎めないのは、自由気ままなバイタリティゆえか。監督の実体験に基づいていることもあり、下ネタのギャグも妙に現実にフィットして、ユルい世界観の中で不思議な魅力を放つ。

     “決して戻らない”というタイトルも味があり、なかなか意味深。タイトルどおり、彼女たちははきだめを後にするのかもしれないし、相変わらずそこに居続けるのかもしれない。そんなことを考えさせ、余韻を残すのが妙味。

  • アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
    何はさておき、まずは進化した3D映像体験!
    ★★★★

     3Dメガネを渡されて映画を見るのはいつ以来か……そんなことを考えつつ向き合ったが、前作同様というか、それ以上に3D体験が重要になる続編。

     衛星パンドラの森に潜り込むファーストシーンからして、明らかに映像の質感が違う。通常の倍である一秒48コマのハイフレームレートの効果か、臨場感の質はこれまでにないもの。空から海上、海中へと、縦横無尽に動き回るビジュアルの凄みは体感の価値がある。

     “家族の絆”というお約束の題材をベースにしつつも、予想を覆してくるのがパンドラの物語らしさ。主人公夫婦の子どもたちの個性が際立っていたこともあり、続編ではさらなる活躍を期待したい。

  • あのこと
    激痛を免れない彼女の12週間戦争
    ★★★★

     ディヴァン監督は原作を読んで、激しい怒りを覚えたという。その怒りが、そのままヒロインの心情に重ねられたかのよう。

     中絶が法で禁じられた時代の女性格闘史という点では『主婦マリーがしたこと』の変奏曲とも言えるが、中絶を切望する側を主体にしたのがミソ。媚びない顔つきをとらえたハンディカム映像と、シンプルな単音のスコアが一体となったリアリズム。表情だけ、声だけの処置の場面は激痛が伝わってくるようで生々しい。

     生命軽視の点では非難を受けかねないが、怒りを原動力にして闘う人間のドラマは、女性に厳しい社会の非を確実にとらえている。主人公を“戦争に向かう兵士”と称した監督の本気を感じる力作。

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