略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
謎めいたタイトルに誘われ、物語に入ってみたら、そのいびつな世界の前では謎の解決はどうでもよくなる、そんな不条理スリラー。
ニヤケ顔だったり仏頂面だったりの“同じ顔の男たち”や、遠くにポツンと見える人影の不気味さ。男たちの言葉尻ににじんだ悪意によって高まる不穏。かと思うと、田園地帯のハッとするほど美しい映像が展開したり。いずれにしても、ざわつきは止まらない。
ガーランド監督は、“まず感じて欲しい。考えるのは見た後で”と語っているが、フェミニズムに通じるテーマは多様な解釈ができそう。とりわけ、仰天のクライマックスが意味するところは語り甲斐があるだろう。
ディズニーらしいアップテンポのファミリー冒険活劇だが現代的な視点も盛り込まれ、ワクワクする一方で考えさせられもする。
親子三世代の愛と葛藤のドラマをハートウォーミングのベースに置きつつ、最初はミステリアスに思えた異世界の秘密を解き明かす。冒険のスリルに関してはコンパクトにまとまり過ぎた感もあるが、ビジュアル的にもキャラクター面も魅力大で、退屈とは無縁。
エネルギー問題と環境問題を、ともに解決する上で生じる齟齬。これを浮かび上がらせる物語は、今を生きる人間には重いものがある。保守的な中国の市場を完全に見限った(?)、ダイレクトなLGBT要素も興味深い。
勝因はドウエイン・ジョンソンに尽きる。ニラミの効く目力の凄みに圧倒的な筋肉量、そして問答無用の威圧感。これで“破壊神”を名乗られたらゴメンナサイとしか言いようがない。
一応はスーパーヴィラン映画だが、今やハリウッド随一の愛されスターの主演作なのだから、そこは変化球が効いている。面白いのは“正義”の概念のとらえ方で、ヒーローの正義が、必ずしも正義とならない場所もある。そんな世の複雑さを浮かび上がらせた点に硬派な味アリ。
アクションはもちろん派手で豪快。製作を兼任したドウェインはDCのマルチバース化にも意欲的で、それを匂わせるラストも見逃せない。力技が随所に生きた快作!
トリッキーな構成が面白い。永野芽郁がいきなり登場していることを踏まえれば、このトリックも優しい方ではあるが、それでもサスペンス性は十分。
緊張感を高めるうえで効果を発揮しているのは、母と娘がさらされる嫁ぎ先での悪意。義母義妹、その家族、さらには夫にまで来診的な圧迫を受け、それが深まるほど母娘の間の葛藤がドス黒さを増し、胸のざわつきを覚えずにいられない。
毒を含んだドラマではあるが、母親であること、娘であることの意味の重さを伝えた力作であることに疑問の余地はない。女優陣は誰もが熱演で、それだけでも目を奪われる。
アダム・マッケイ印も納得の風刺劇。コメディとスリラーというスパイスがピリッと効いており、夢中になって見てしまった。
ベースはグルメカルチャーに対する痛烈な皮肉。至高と思われた天才シェフの料理が、コースが進むほど歪み出す展開はもちろん、流血のバイオレンスもまたスリリング。一方で、N・ホルトふんするグルメオタの描写や、給仕チームのやり過ぎ感が笑いをとる。
しかし本作のもっともおいしいキャラはヒロイン、マーゴだろう。美食という権威に反逆するシェフの暴走に、やはり反逆心で立ち向かう凛々しさ。招かれざる不穏分子を体現した、A・テイラー=ジョイのオトコマエな姿に惚れる!