略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
限定空間を主要舞台にしているためか、舞台劇を観ているような感覚に陥る。良い意味で三谷幸喜監督らしさが表われたエンタテインメント。
ときに噛み合わず、ときに意地を張り合う、キャラクターのそんな関係性の描写は『12人の優しい日本人』や『清須会議』にも似たムード。セリフの端々にユーモアがにじみ、ダメ男たちのケンケンガクガクに何度となくふき出した。
裏を返せば新味はないが、ハイアベレージの面白さは確実に宿っている。つき合う相手によって人格が異なる、そんな主人公にふんした長澤まさみの妙演も見もの。
韓国ホラーは土着テイストが強く本作にもその要素はあるが、着地点はむしろハリウッド映画の痛快さに近い。
祈祷師の血を引くインチキ除霊師が、ある霊的な事件の調査によって自身の能力に覚醒するという展開は、マーベルのヒーロー映画の各シリーズ第1作に通じるつくり。オカルトホラーの怖さよりも、アクションファンタジーのワクワク感の方が先に立つ。
性格には少々難があるがクールでイケメンの主人公像に、カン・ドンウォンの個性がピッタリはまった。主人公と仲間たちのチームプレイもマーベル的な共闘スタイルで、ハイブリッドな面白さを感じさせる。
プロダクションは近年、怪作を連打して勢いに乗っている製作会社ダーク・アビス、プロデューサーに『プー あくまのくまさん』シリーズの監督&製作コンビ。いやはや、英国インディーズホラーのシーンは元気だ。
童謡に題材を得た本作は『悪魔のいけにえ』のイギリス版、はたまた森バージョンというべきか。殺人鬼のルックは羊の頭部を持つ以外はレサーフェイスだし、チェーンソーを振り回すシーンもあるし、結末にもオマージュが垣間見える。
空間&時間設定には無理があるが、その強引さ込みで楽しむのがZ級映画の流儀。ホラー好きとしては、プロットよりスプラットを優先した意気を買う。
世界一の高齢化大国、日本よりも出生率が低いスペインから出るべくして出た、未来への警鐘というべきホラー。
加速する酷暑の中で、老人たちが静かに、深く異常をきたしていく物語はショッキングそのもの。老人だから仕方ないと諦められがちな、痴呆症にも似た症状の裏側に、ある電波が存在していたというとんでも設定も面白く、黙示録的な世界観に引きずり込まれる。
思い返せば約半世紀前、『ザ・チャイルド』というスペイン製ホラーがあったが、あのときの殺人キッズが老齢にさしかかった、そんな時期。時代がグルッと一巡した感あり。
なるほど、これは“乱暴”な愛の物語だ。だからこそ面白い。
平穏を保とうと頑張り過ぎるあまり、ジワジワと壊れていく主婦の日常は夫の不貞という事実の発覚により一気に崩壊。火災のイメージやチェーンソーの投入など、家庭劇にはあって欲しくないシーンの挿入は、ヒロインの心の崩壊を物語っているかのよう。
それにしても、改めて江口のりこという女優が怪物であることを思い知る。『あまろっく』『お母さんが一緒』とは、まったく振り幅が異なる神経衰弱ぎりぎりの怪演。年明けの映画賞レース、主演女優は彼女に独占して欲しい。