略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
虐待を受け続けて“壊れた”と語る女性と、そんな彼女に慕われ、友情を育んできたアウトロー女子。“壊れた”ことのない後者が、前者の突然の自殺に心を揺さぶれる。そこに、このドラマの面白さがある。
“なぜ私を置いて逝ったのか?”“なぜ、何も相談してくれなかったのか?” そんなヒロインの惑いに寄り添った構造。無駄を省き、必要な逸話だけで構成したタナダ監督のソリッドな話術が光る。原作と同様に余白を残したラストもイイ。
ガラは悪いが根は優しい主人公を、永野芽郁が演じているが、彼女がこれまでふんしてきた役とかけ離れていることに驚いた。ブラック企業の上司に言い負けないキャラの妙演も面白い。
人気絶頂期のビートルズにインドの瞑想施設で偶然、出会ってしまったカナダ人の若者。そんな彼=サルツマンが、その後、映画製作者として活動していたからこそ本作は生まれた。まず、その奇跡に感謝。
ビートルズのドキュメンタリーという側面は、やはりファンには興味深い。とりわけ、ジョン・レノンの名曲において、ネガティブなモデルとなってしまった人物へのインタビューはスリリングで目を引く。
一方で、本作はサルツマンの若き日の冒険をノスタルジックにたどった青春ドラマの側面もある。そういう意味では、『あの頃ペニー・レインと』を見終えた後にも似た甘酸っぱい感触も。
水田監督×主演・阿部サダヲの顔合わせらしからぬ(?)落ち着いたつくり。舞台となる地方都市の時間の流れゆえか、ともかく同じような東北の町で育った身にはリアルに感じられた。
面白いのは“おそろしく察しの悪い”と言われる主人公のキャラで、映画のユーモアを支える存在。職場では合理化についていけないのに、私生活では食器を使わずフライパンなどからダイレクトに食べる、妙な合理主義が妙味。
元ネタの『おみおくりの作法』を見ていてもグッとくるラストが、これまた印象的。“STILL LIFE”というタイトルで撮影が進められたというが、この題名でも良かったのでは。ともかく、現代の愛すべきファンタジー。
『燃ゆる女の肖像』のシアマ監督が同作の繊細かつ情熱的なタッチもそのままに、ファンタジーに着地する物語を演出。
8歳の少女が同年齢の母と対峙するファンタジーはハリウッド的、さらにいえばジブリ的ではあるが、それらと異なるのは音楽の使い方。静謐な世界が続くと思いきや、ここぞという場面に鳴る音にファンタジーらしいときめきを覚えた。
ミステリーと温かさの両極で揺れる物語の中で、ほっこりとさせるのは、子役のサンス姉妹のたたずまい。彼女たちの、いかにも子供らしい独特の(ややガニ股な!?)歩き方が、ビジュアルの美しさと相まって寓話風の印象を残す。『燃ゆる~』とは逆サイドに触れた鮮烈。これは必見!
『ババドッグ 暗闇の魔物』『ニトラム』などオーストラリア映画のスリラーは近年、力作が多いが、本作もヒケを取らない。
これらの強みは、舞台がオーストラリアの“見捨てられた地”であること。本作も同様で、干ばつ地帯の村で起こった殺人事件の隠蔽、その裏に隠された秘密にスリルが宿る。スリルの背景には、丁寧にエピソードを積み上げた演出力と編集力があり、田舎の庶民生活の生々しさとともに一気に見切った。
回想で語られる若き日の湖のみずみずしさは、現在の干上がった地と対をなす。ミステリーの重厚さはもちろん、時の流れの切なさも妙味。失われた故郷に虚無を見る、主演のE・バナの演技もイイ。見応えアリ!