略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
R・ダウニーJr.の父親が映画監督であったことは知られているが、その作品を見ている映画ファンは少ない。というのもメジャー作品は皆無で、ほとんどがインディーズ。代表作とされる本作もそのひとつだ。
広告業界の狂騒、拝金主義、人種問題など、当時の世相を風刺。ブラックスプロイテーション映画の隆盛以前に黒人を主人公に据えた野心もさることながら、ブラックユーモアを詰め込めるだけ詰め込んで暴発させるユニークな作りも、印象は強烈だ。
ファンキーな音楽も含め、ダウニー父のリベラルかつ自由な感性が伝わる必見作。『イージー・ライダー』の同年の製作で、当時のカウンターカルチャーの熱を知る上でも必見。
70年代アクション指向らしく『要塞警察』をベースにしながら、お得意の“暗殺者がいっぱい”的な状況を作り出す。そんなカーナハン監督の最新作。今回もエネルギッシュで大いに楽しめる。
女性警官と詐欺師、暗殺者、そしてサイコパスの殺人狂。彼らが署内の警官を虐殺したり、利用したりしながらバトルロワイヤルを繰り広げるのだが、誰もが個性が尖がっているだけに先が読めない。キャラを活かしたサスペンスの妙。
製作兼任のG・バトラーを目立たせ過ぎた感はないではないが、カーナハンが描き続ける男の獣性やタフネスにはうってつけの個性。近年のカーナハン作品には欠かせないF・グリロもいい味を出している。
テキサスの農場を訪れた若きポルノ映画撮影隊6人が殺人鬼の恐怖に直面……という設定は『悪魔のいけにえ』直系ホラーだが、スプラッターを強化しつつ、ドラマはありきたりの展開を突破する。
まず殺人鬼が高齢の老夫婦であることが面白い。加えて、老妻の若さに対する羨望を、底なしの心の闇としてとらえる。サイコな恐怖は惨殺のバイオレンスと密に結びついているのだ。
ホラーの分野で台頭するもイマイチ、ブレイクしきれなかったタイ・ウェストだが、A24の製作下でやりたいことをやりきり、ひと皮むけた感がある。70年代ホラーへのオマージュもふんだんに盛り込まれ、お腹いっぱい。ホラーファンは、とにかく必見!
前作『~バトルロイヤル』に続いてT・ワイティティが監督を務めるとなれば、コミカル路線は継続必至。冒頭こそシリアスだが、ソーが出てくるやユーモアが随所に炸裂し始める。
アスガルドの子どもたちに語られるソーの伝説……という体。伝説ゆえの脚色からユーモアがにじむ。前作でもレッド・ツェッペリンの曲がイイ味を出していたが、今回はガンズ&ローゼズのヒット曲を多数フィーチャー。ソーの豪快キャラにはハードロックが良く似合う。
もちろん笑えるだけではなく、感情に迫るエピソードもある。元カノ、ジェーンとの恋の再燃はドダバタ含みも、味のある展開。N・ポートマンの、円熟味を増した“女優の顔”に唸った。
スプラッター指数は恐ろしく高いし、人体破壊の描写も痛々しい。まず、これに対する覚悟が必要だ。
バイオレンスは単なる見世物ではなく、感染者の悪意が引き起こしたこととして描かれている。暴行、殺人、レイプなどの残虐行為の連続は、感染者たちの理性なき暴言によって殺伐感を高めていく。
パンデミックを題材にしているが、ゾンビ映画とは大違い。ウイルスによって、連鎖的に暴発し続ける人間の悪意。それらが普段は理性によって隠されているものだからこそ、本作にはリアルな怖さが宿る。あらゆるホラーを見て、本作に投影した台湾の新鋭ジャバズ。その才腕は記憶しておきたい。