略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
序盤の展開は、飛行実験を含めて『トップガン マーヴェリック』風。スクリーン仕様で作られた映像的迫力の点でも似通っており、ぜひ劇場で見たい娯楽作。
宇宙飛行シーンをはじめとする縦横無尽のスペクタクルはクリアなアニメーション映像の効果もあり、臨場感たっぷり。『トイ・ストーリー』シリーズと同様にアクションもアップテンポで気持ちよく進む。
大人の観客に目配せするようになった同シリーズの後半に比べると、ファミリームービーに回帰した感はあるが、エンタメとしては大満足。ザーグの意外過ぎるほど意外な正体を知ることができるのは、シリーズのファンには嬉しい。
『007』シリーズを2本撮ったベテラン監督キャンベルらしい仕事。洗練されたソツのないアクション演出に唸らされた。
天涯孤独のヒロインが暗殺者のスキルを活かして復讐に挑む、そんな物語にハードボイルドな空気を宿らせる巧さ。ウィットに富んだセリフの応酬でドラマを動かし、彼女が敵と寝ることもサラリと納得させる、スリリングかつ粋なムードは古き良きスパイ映画の香り。
マギー・Qやサミュエル・L・ジャクソンのキャスティングは、そこにラフな現代性を加えており、自己流を貫くキャラの魅力をにじませる。とりわけ前者はアクション面での肉体的な貢献度も高く、折れない女性の強さを体現している点でも高感度大。
スティーブン・キングの息子J・ヒルの原作をS・デリクソンが映画化――ときめく企画だが、期待にたがわぬ内容で嬉しくなった。
殺人鬼と超常現象というふたつの恐怖のエッセンスを組み合わせ、ローティーンの少年のサバイバルと成長の物語に帰結する。ホラーというよりファンタジーとも思えるのは、デリクソンのストーリーテリングの巧みさゆえだろう。
70年代という時代背景のノスルタジーや、虐待に苦しんでいる子ども心の生々しさ。それらがリアリティを加えている点も、本作の大きな魅力となっている。デリクソンが『ドクター・ストレンジ』続編ではなく、こちらに取り組んだのも納得。
賞レースが賑わう時期に公開されても良いのでは……そう思わせるほど念入りに作りこまれた力作。
これまで映像と音楽の華やかな融合が取りざたされがちだったB・ラーマンだが、ここでは本格的にドラマを語ろうとしていることに驚かされた。大佐の視点で描かれる物語は、ひとりの人間の支配力について大いに考えさせ、なおかつプレスリーの死の“真相”をも浮き彫りにする。
A・バトラーも、T・ハンクスも、当人に全然似てないなあと思って見始めたが、見終わってみるとそのイメージがしっかり付いている。彼らの演技も賞レースが好みそうだが、とにかく役者陣も力が入っていて歯応えアリ。
SNSや掲示板を見ていると、他人を見下す風潮が顕著になったと思わずにいられない。『老人ファーム』でお年寄りに対する“見下し”を描いた三野兄弟が、そんな現実に再び切り込んだ。
主人公は殺人の前科を持っており、雇われ先のスクラップ工場の上司からは“殺人鬼”と揶揄される。彼の同僚には出稼ぎ外国人労働者も多く、彼らもまた上から踏みつけられる。そんな弱者の目線から、優しさや思いやりが希薄になった“今”が見えてくる。
悪意まみれの世にしたのは誰か? 下を踏みつける人間の上には、さらに巧妙に踏みつける者がいる。決して明るい気分になれないが、今見るべき映画である。