略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
エイリアンによる侵略とゾンビパニックをかけあわせ、ブラックユーモアで煮詰めた怪作。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を下敷きにした、一軒家に立てこもってサバイバルを図る人々の奮闘劇はスリリングというより、むしろ弛緩気味。そこに生じた隙間を笑いで埋めてくる。特撮をあえてショボく見せたのも、悪玉エイリアンたちをドタバタキャラに設定したのも、そんな意図からだろう。
ユルユルだが、それでも目を見張ったのは、スプラッター描写の本気度。顔面真っ二つや頭部損壊などの瞬間的バイオレンスにもブラックユーモアがにじみ、『グレムリン』などのSFのパロディを含めて、その筋のファンにはオススメ。
原作に遠慮して甘くなった感がある前回の映画化に比べ、本作は原作をアレンジしたことでホラー強度がグッと増した。
主人公チャーリーはいたいけな少女だが、一方で人を殺す能力を持った危険な存在だ。その“危険”さを、これでもかと強調。望まなくとも肉親も、小動物をも傷つけてしまう。能力を発揮する際の快感を口にもする。人間か、モンスターかと問われたら、本作は彼女を後者と断じているのだ。
前作のような人間性や子どもの愛らしさを好む向きにはお勧めしないが、寓話の残酷性を好む方にはぜひ見て欲しい。怪物としてしか生きられない少女の恐ろしさはもちろん、その通過儀礼を描いた切ないドラマでもあるのだから。
アカデミー賞で国際長編映画賞・長編ドキュメンタリー賞・長編アニメーション賞の3部門にノミネート。今まではあり得なかったそれを可能にしたのが、まず本作の革新的な点。
主人公アミンの半生は、アフガンからロシア、さらに北欧へと逃げ続けることによって築かれる。実名も顔も出せない。だからこそのアニメーション。
何より重いのが、国を転々としてアイデンティティを失い、それを再生していく人がいるという事実。ゲイであることを含めて、嘘をつかなければ生きていけなかった――安定した日本人にはビンとこないかもしれない。しかし、このひとりの人間がたどった物語は、世界の構造を実写以上に生々しく伝える。力作!
セリフで引き合いに出される『オーシャンズ11』のごとく、難攻不落の大金庫を狙ったチームの奔走劇が展開。そこにF・ハイモア演じる天才工科大生が混じるという寸法。
スペイン中が熱狂した2010年FIFAワールドカップ決勝戦のさなかの決行というアイデアは買い。試合の経過を気にする部下を叱りつけながら、警備に全精力を傾ける警備主任の手ごわいヴィランぶりも光り、激しい攻防から目が離せない。
オチに詰めの甘さはあるものの、『オーシャンズ11』のような痛快さは捨て難く、続編の可能性を匂わせる結末に期待してしまう。バラゲロ監督の『REC』に続くシリーズ化、なるか!?
20年前のドキュメンタリー映画『THE POGUES:堕ちた天使の詩』は40過ぎの酔いどれアーティスト、S・マガウアンにスポットを当てた傑作だった。20年を経て、60を過ぎた彼の今を描いたのが本作。
60歳記念コンサートの映像からある程度予想はしていたが、シェインはさらにヨレヨレ度を増していた。創作意欲はある。しかし現在もアル中だ。どちらに転ぶかはわからない。そこにスリルがにじむ。
アーティストとして復活するなら劇的だ。が、彼の代表曲のひとつ“サリー・マクレンナ”の詞のごとく酒に殉じても、筋は通る。どっちに転んでも納得のいく、そんな二つの未来を浮き彫りにした点で、傑作である。