略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
『怒りのデス・ロード』と同じルックを持ってはいるが、物語の構造はまったく異なる。それもそのはず、あちらが3日間の物語だったのに対して、こちらは約15年の時が経過する一大叙事詩的。
なので前作のようなチェーンリアクション的カーアクションには限界があるが、主人公フュリオサの復讐から軸足をずらさず、ドラマを研ぎ澄ませてくる。前作『アラビアンナイト 三千年の願い』で“物語る”ことの意味を考察したミラー監督らしい指向といえよう。
思い返せば『マットマックス』第1作は復讐の物語だったが、そういう意味では原点回帰。マックスらしきキャラが一瞬登場するが、その役割をボカして描いているのも味。
『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』以来10年ぶりのJ・グレイザー監督の新作だが、映像と音が結びついた不穏な世界は健在。
一見すると幸福な家庭。しかし家長はナチ高官で、広い屋敷の隣にはアウシュビッツ収容所がたたずむ。観客が目にするのは、この家族の日常のみだが、見張り塔や立ち上る煙など屋敷の向こうにどうしても意識が行くのは本作の凄み。
『アンダー~』と同様の静かな重低音や、ロングショットの多様など、観る者の脳を侵食するようなつくりは今回も圧倒的。ある意味ホラーな緊張感が最後まで持続する。凄い!
「ウマ娘」はプレイしたことはないが、ゲーム画像は見たことがある。興味を引かれたのは筆者が競馬好きだから。
その視点で観ると、本作が中央競馬の2001年の盛り上がりを再現していて嬉しくなった。TVアニメ版も、その時代、時代の頂上決戦、すなわちG1レースを再現しているが、それに則っているという点ではウマ娘ファンの期待を裏切らない。
この手のアニメーションでは、煽情的な描写の無駄な挿入によってゲンナリさせられることがあるが、本作にはそれがない。見えない壁にぶち当たったウマ娘が、それを突破する爽快さ。青春ドラマとしても、よくできている。
レゲエの伝説マーリーの36年の人生のうち、1976~78年の2年間にスポットを当て、その精神や人間像を浮き彫りに。
ラスタファリを信奉し、自然体で生きるマーリー像は尊敬すべきものがあるが、一方で妻との口論を織り込み、弱さも描きこむ。聖人としてのマーリーに偏ることなく、人間マーリーを見据えている点がいい。
“贖罪が本作のテーマ”と監督は語るが、しばし挿入される、炎から逃げる少年と馬上の男のイメージがそれを象徴しているかのようで興味深い。「リデンプション・ソング」を歌う場面には、思わずグッときてしまった。
ジョンがヨーコと別居していた時期にスポットを当て、彼ら夫妻の個人秘書だったメイ・パンの視点でこの時期を検証。
一般的にはジョンの荒れていた時代とされているが、それだけではなくクリエイティブな産物、たとえばエルトン・ジョンやニルソンとの共作など、実り多き時代であったことがよくわかる。
何より、ジョンとメイの恋愛関係の行方は本作を牽引する大きな要素。我々観客はジョンとヨーコがこの時期を経てヨリを戻すことを知っている。ならばメイとの破局はどのように訪れたのか? これは若い女性の喪失感を見据えた哀切なラブストーリーでもある。