略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
奇妙な間取り図から殺人ミステリーに発展する物語。インターネット時代を反映しながら、盛り上がるざわつきをとらえる、そんな前半にまず引き込まれる。
面白いのは急展開する後半で、オカルトやバイオレンスが絡みホラー色がどんどん強まっていく。横溝正史風の土着信仰や狂気、サバイバルなど、さまざまな恐怖のエッセンスが込められた、良い意味でのB級感が味。
野心家の若いユーチューバーにふんした間宮祥太朗と、飄々としている佐藤二朗の組み合わせも面白く、テンポよく楽しめる。続編希望。
未解決の殺人事件を描いてはいるが、謎解きの要素は皆無といってよい。本作がスポットを当てるのは、捜査に当たる人間の心理状態だ。
主人公の刑事の、袋小路を堂々巡りするような閉塞的心情に肉迫し、それが緊張感として機能するつくり。モル監督が『ゾディアック』が好きと公言するのも納得がいく。
面白いのは男社会に対する視点。被害者が魅力的な若い女性であるのに対し、容疑者はすべて男性。コミュニケーション下手な主人公は、女性に対する聞き込みも冷たいものを感じさせる。そして捜査する側はほとんどが男性。映画の後半で新米の女性刑事が主人公に語る、ある言葉をぜひ噛みしめて欲しい。
そこで終わるか!という前作の構成ゆえ、続きが見たくなるのは必然。待ちに待った続編は、期待にたがわぬスケールの大きさに目を見張った。
主人公ポールの成長のドラマが、まずいい。砂漠での試練を経て、しだいに表情にたくましさが宿り、救世主としての風格が身についていく。前作では少年のようでもあったシャラメの、成長の妙演は見る者の心を引き寄せるに十分だ。
もちろん砂漠のスペクタクルは圧巻で、サンドワーム・ライドの描写は最強の見せ場。スタントや空撮を組み合わせ、その複雑な動きを自然なシーンに仕立てた視覚効果チームは、今回もオスカーの有力候補になりそうだ。
L・ベッソン作品の中でもとりわけ寓話性が強く、物語として面白いのは、回想形式で語られるからか。犬を操る主人公と精神科医の対話を通して、ドッグマンのドラマが紡がれる。
『ジャンヌ・ダルク』にも通じる、信仰と苦難というテーマ。“私は神を信じてるけど、神は私を信じてるの?”という主人公の言葉にドラマの重みがにじむ。
メイク姿が多いせいか最初は誰かわからなかったC・L・ジョーンズの熱演も見どころだが、たくさんの犬たちの“好演”にも目を見張るものが。主人公の“家族”になったと思えば、愛嬌のあるペット、さらには人間を襲う恐怖の対象にもなる。ドッグトレーナーの仕事に敬服。
インドア派の女流作家が冒険に巻き込まれる……というと『幸せの1ページ』『ザ・ロストシティ』が連想されるが、そこはM・ヴォーン監督作、一筋縄ではいかない陽性のエンタメに仕立てた。
ヒロインがまったく冒険慣れしていないところが、まずイイ。諜報小説のプロでも本物の諜報活動に巻き込まれるとアタフタするのはお約束。一方で、彼女を救うスパイの頼りなさげで、頼りになるキャラも味。
そして中盤で明かされる、ある秘密の配置が絶妙。それまで見てきたものや、その後に見るものが新鮮に思えてくる。ヴォーンのスパイアクション『キングスマン』シリーズとは、まったく異なる面白さだ。