猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • BETTER MAN/ベター・マン
    先に告白があり、それを映画にした
    ★★★★

    そもそもは、マイケル・グレイシー監督が、何に使うのかわからないままロビー・ウィリアムズに過去を語ってもらい、それを録音したのが始まり。映画に出てくる本人のナレーションのほとんどは、その音声なのだ。この映画に真実味がたっぷりある理由は、そこにもある。ウィリアムズの顔を猿にしたのは、ありきたりのミュージシャンの伝記映画にしたくなかったのと、彼自身が昔のパフォーマンスを振り返って「まるで猿のように」などと言ったから。最初は奇妙に感じる観客もいるかもしれないが、いつしか忘れて感動させられるはず。音楽、ダンスのシーンのすばらしさは、さすがグレイシー。ウィリアムズのことをまるで知らなくても、見て損はない。

  • 白雪姫
    2025年にアップデートするとこうなるのが必然か
    ★★★★★

    2025年に白雪姫をライブアクション映画化すると、こうなるのだろう。主演女優や7人のこびとについては公開前から散々言われたが、そこに限らず全てにおいてアップデートされている。白雪姫はこびとの家を掃除してあげず彼らにやらせ、王子様にキスされて解決でもない(そもそも今回は『王子様』でもない)。メッセージ性が強いだけに、最初から結末が読める。だが、今、1937年版と同じ話を語るという選択肢はないし(それをやれば批判される)、これはこれで悪くない。新曲は良いものの、映画を超えて愛される名曲になるものはなし。女優たちは頑張っているが、特に女王のキャラクターは薄く書かれているので限界がある。

  • 教皇選挙
    実は身近にもある、かなり共感できる話
    ★★★★

    「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガーが今回手がけるのは、心理的な戦争。だが、前作同様、終始緊迫感に満ちていて目が離せないのはさすがだ。次のローマ教皇を選ぶ選挙というと遠い世界の話のように思いがちながら、敵の過去を暴いて陥れたり、仲間内で派閥があったりなど、ここで展開されるのは、政治や企業、職場や身近なグループにも「ある、ある」な状況。しかし、意外な結果が訪れたと思ったら、まだ先があるのは予測しなかった。役者はベテランの実力派揃いで、全米映画俳優組合賞(SAG)のキャスト賞を受賞したのも納得。音楽、美術、衣装も優れている、すべてにおいてよくできた大人のスリラー。

  • スイート・イースト 不思議の国のリリアン
    アメリカ社会を独自の視点から見つめる風刺映画
    ★★★★★

     数々のイデオロギーが混在する現代アメリカ社会を独自な視点から見つめる風刺劇。世間知らずの女子高生が、ピザ屋での射撃事件をきっかけに、次から次へと違った思想のグループに身を寄せることに。映画は、それぞれの世界を、シニカルかつブラックなユーモアを持って描いていく。若く美しいがために人を引き寄せる彼女は、危なっかしいが被害者ではない。そもそも自分が何を求めているのかもわかっていない。そんな彼女が引っ張る冒険物語は、さながらダークでモダンな「不思議の国のアリス」。粒子の粗い昔風の映像も時代を錯覚させ、シュールリアルな雰囲気を高める。新人の監督と脚本家による、実験的な意欲作。

  • Four Daughters フォー・ドーターズ
    ユニークな手法で展開する感情的で衝撃的な傑作
    ★★★★★

     俳優を使った再現シーンを入れながら展開するドキュメンタリー。安っぽいワイドショーの再現ドラマみたいになるのかと思いきやまるでそうではない。それぞれのシーンを演じる前後の本人たちの反応を見せることで、真実、感情がより伝わってくるのだ。4人姉妹のうち、なぜ下ふたりは本人たちなのに、上ふたりは女優なのか。そこが判明する後半から映画は大きく変わり、非常にダークになるが、そこまでにも豊かではない女性たちが置かれた状況のリアルがことごとく語られていく。女性たちの不幸の連鎖を見る一方、そこには揺るがない母娘、姉妹の愛もある。若い世代への希望も感じさせる、衝撃的で胸を打つ傑作。

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