略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
ここのところ、Disney+の「スター・ウォーズ」シリーズや、もともとジェームズ・キャメロンのプロジェクトだった「アリータ:バトル・エンジェル」などの監督を手がけてきたロバート・ロドリゲスが原点に立ち戻った、オリジナルのインディーズアクション映画。B級映画っぽいところも彼らしいと言える。90分、猛スピードで、思わぬ方向に次々と話が展開し、最後には驚きの結末が。ツッコミどころはあるだろうが、それに気づく暇もないほど。この話が現実的かどうかなどと考えず、ジェットコースターに乗るような気持ちで見るのが正しい。このような映画でベン・アフレックを見られるのもまた新鮮で楽しい。
あまり語られてこなかったアメリカの黒い歴史に誠意を持って向き合う野心作。スコセッシが複雑なこの話の中心に据えたのは、デ・ニーロとディカプリオが演じる悪い男たち。モラルが曖昧なキャラクターは最も美味しいものだが、このふたりはここでもさすが。とくに愛と搾取、罪悪感がごっちゃになるディカプリオは見応えあり。しかしそこに視点を置いたため、白人の男たちの話になってしまった。予想しなかったラストもまたそれを強調することに。次はオーセージの人たちが語るバージョンを見てみたいもの。J・プレモンスによるFBI捜査官の登場でギアがシフトし、緊張感が高まるので、そこをもう少し早めに持ってきて欲しかったかも。
90分間、フルスピードで展開していくスリラー。そこで見せられることは非常に残酷で、決して気持ちの良いものではない。しかし最後になって、このストーリーを通じて何を伝えたかったのかがしっかりとわかり、意味をなす。たとえ受け身であっても、あまり深く考えなかったにしても、これらの動画や写真を見る、そこに参加するというのは、加害者に加担すること。そして加害者だっていつ被害者になるのかわからない。今作で長編監督デビューを果たすチェ・ジョユンは、そういった現状に対する強い怒りを表明し、警鐘を鳴らす。
とびきりダークで辛辣な風刺コメディ。現代社会を鋭く突いてくる。かまってちゃんの主人公シグネと、ナルシストのボーイフレンドは、自分が注目されていないと我慢できない。ボーイフレンドがキャリアでブレイクすると、シグネは「そこまでやる?」と呆れることをやるのだが、嘘をつき、被害者、犠牲者になって注目を浴びる手段は、某セレブリティも使った手段。同じくノルウェーの「わたしは最悪。」も決して褒められない女性をコミカルかつ共感できる形で描いたが、シグネのほうがずっと最悪。今作が成功したのは、そんな彼女に体当たりで挑んだクリスティン・クヤトゥ・ソープのおかげが大きい。今後の活躍に注目したい女優だ。
舞台劇への愛に満ちつつ、そのコミュニティをちょっと皮肉ることもする、絶妙なトーンと独創性に満ちたコメディ。それぞれのキャラクターがとてもしっかり書かれていて、演じている役者たちが楽しんでいるのが伝わってくる。そんな中にも、自らの経験があってこそ生まれた洞察力とリアリティがあるのだ。そして子供たちがすばらしい。オーディションのシーンから最後の劇中劇のシーンまで、子供たちの歌唱力、ダンス、パフォーマンスにすっかり見入ってしまった。サンダンス映画祭でアンサンブルキャスト賞を受賞したのも納得。最後に強く感動させた後にもまた笑わせるのが心憎い。楽しくて心温まる作品。