略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
ここ数年、ガイ・リッチーは映画監督としてますます成熟してきていると感じる。彼らしさはキープしながらも、スタイル重視になりすぎず(だがもちろん洗練されたスタイルはある)、うまい具合にパンチを効かせるのだ。この映画も、せりふは絶妙、キャラクターも美味しくて、笑わせてくれるシーンがたっぷり。ヒュー・グラント、ジョシュ・ハートネット、オーブリー・プラザはとりわけ良い。「ジェントルメン」でも映画業界をネタにしたが、今回も痛快な形でそれをやっている。日本ではこれから公開の最新作「The Covenant」も全然違うタイプの映画ながら最高だったし、リッチーは個人的に今とてもエキサイティングな監督だ。
ハリウッドの俳優と脚本家がストライキを起こした今年、AIというテーマはこれまで以上にタイムリー。だが、ギャレス・エドワーズの視点は独特で、共感できるかどうかは人によるだろう。ストーリーはオリジナルながら、いくつかの映画やシリーズを思わせもする。ビジュアルはすばらしい。予算は8,000万ドルとメジャースタジオの娯楽作としては多くないが、その倍くらいかけたように見える。SFにも毎回リアリティを持ち込むエドワーズが作り上げたこの世界には、近未来でありながらピカピカした非現実さがなく、実際にそこに人々が住んできた雰囲気がある。ジョン・デビッド・ワシントンとマデリン・ユナ・ヴォイルズの相性はばっちり。
今年のサンダンス映画祭で最も心に残った映画のひとつ。とくに同業の場合、カップルで女性のほうが成功すると複雑になるという、今もまだ変わらないジェンダーバランスに鋭く切り込む。映画のはじめの幸せいっぱいのシーンから、スリリングで、セクシーで、美味しくて、どっぷりと引き込まれる。昇進するのが彼だったら、その幸せはいつまでも続いたはずだったのだ。それに、意図しなかったとしても、ライバルの男たちを出し抜くことになったら、陰でどんなことを言われるのか。エゴを必死に抑えようとしてもできない、情けない男をリアルに表現するオールデン・エアエンレイクが最高に良い。衝撃のラストは意見が分かれるかも。
2013年に就任して以来、50カ国以上を訪問してきたローマ教皇フランシスコの姿を追うもの。ナレーション、インタビュー、コメントなどを入れることをせず、教皇が公に向けて語った言葉のみで綴られていく。教皇が強く伝えるのは、宗教や人種、国籍を越えて人々が手をつなぐことの大切さ。「尊厳は風邪よりも速く感染する」という教皇は、お互いに敬意を持つことで世の中は良くなると主張する。アーカイブ映像を編集したこのドキュメンタリーは、これまで公開されたことのない内部の事情を見られたりするわけではないが、人類愛と平和への願いを真摯に語る、説得力ある言葉を聞くのは、心の栄養になる。
とにかく猫がかわいい!子猫の時からずっとお世話をさせていただいてきた(間違っても『育てた』などとは、猫に対しては言わない)人ならば、「ああ、うちのお猫様も小さい時はこうだったなあ」とついつい思い出してしまうはず。もちろん大人の猫には大人の猫のかわいさがあるのだが。そんな中、物語は、猫にとって本当の幸せとは何なのかを問いかける。人間である私たちは、最大限に猫のことを思った上でそれぞれに考え方を持っているし、都会か田舎かでも違うので、この映画の結末には必ずしも共感しないかも。それでもふと、観終わった後、「あなたは毎日、幸せだよね?」と、わが家のお猫様に確認してしまった。