猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • エリザベート1878
    史実にとらわれずモダンな視点から見つめる
    ★★★★

    19世紀、最も美しい女性と崇められ、美を保つための細かい日課を欠かさなかったと言われるオーストリア皇妃エリザベート。ジャンル的には伝記映画とは言え、女性監督マリー・クロイツァーは事実に忠実であることにとらわれず、モダンでフェミニスト的な視点から彼女を見つめる。40歳の誕生日を迎え、歳を取ったと感じている彼女。高い地位にいながらも重要なことを決める権限は何もない。内面に募っていくフラストレーションと反抗心を、ヴィッキー・クリープスが、時にユーモラスに、また微妙なニュアンスを持って表現する。どちらが悲劇的かはわからないものの事実とは違うラストも、音楽のセレクトも、この映画の精神にふさわしい。

  • ブギーマン
    「普通の人々」を参考にした丁寧な人間ドラマの描写
    ★★★★★

    前半はじわじわと緊張感を高め、そこに何かいるのか、いないのかと観客を不安にさせる。そうやってじらしておき、最後にドンと来るやり方がなんともうまい。ホラー映画ながら、ロブ・サヴェッジ監督とクリス・メッシーナはオスカー作品「普通の人々」を参考にしたとのこと。大切な人を失った悲しみに暮れる家族の様子が丁寧に描かれているのも、それで納得。このジャンルでは演技の質が見落とされがちだが、今作の主要キャストはみんなすばらしい。特にソフィー・サッチャーはスティーブン・キングからお墨をもらっただけのことはある。サヴェッジはこのジャンルの若手名監督としてこれからも活躍していきそうだ。

  • クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
    衝撃のビジュアルも、いかにも古典的クローネンバーグ
    ★★★★★

    デビッド・クローネンバーグがホラーに立ち戻るのは「イグジステンス」以来。この脚本もその頃に書かれたものがベースになっているとのことで、古典的なクローネンバーグらしさたっぷり。それはつまり相当ショッキングなビジュアルもあるということ。つい手で目を覆ってしまったシーンも少なくないが、当時の彼の映画を知っている人なら覚悟ができているだろう。コンセプトは非常に挑発的で、面白い。しかしながら、もうちょっとその先に何かあればよかったという気もしなくはない。組むのがこれで5度目のヴィゴ・モーテンセンは、クローネンバーグの独自の世界を完璧に体現している。レア・セドゥ、クリステン・スチュワートもとても良い。

  • ハート・オブ・ストーン
    アクションにお金はかかっているが際立つものがない
    ★★★★★

    このジャンルにおいて、女性が主役ということ以外、とくに新しさのない映画。お金をかけたアクションはたっぷりあるものの、つい最近公開された「ミッション:インポッシブル」最新作とどうしても比べてしまう。カーチェイスもガル・ガドット自身が出た「ワイスピ」シリーズにまるでかなわないし、彼女が演じるストーンも「ワンダーウーマン」のような魅力に欠ける。そもそも、ストーンの人柄もよくわからない。続編でもっと見せていくつもりなのかもしれないが、そこが弱いので観客は思い入れできないのだ。ジェイミー・ドーナンのキャラクターも二面的で薄っぺらく、才能が無駄遣いされているのが残念。

  • クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男
    深く突っ込まない、ポジティブな裏話のコレクション
    ★★★★★

    「ヘイトフル・エイト」までの8作の裏話がそれぞれに語られるのは興味深い。とりわけ低予算で作ったデビュー作「レザボア・ドッグス」にまつわる話は面白い。だが、ネガティブなことが意図的に避けられているのは明らか。彼の成功に密接に関わってきたハーベイ・ワインスタインのひどい行いをずっと知っていたことや、ユマ・サーマンに車のスタントをやらせてケガをさせたこともさらりと触れるだけ。「ヘイトフル・エイト」の脚本がリークし、激怒した彼が一度製作をやめると決めた出来事もまるで語られない。彼が極めて優れた監督/脚本家であることは変わりないのだし、恐れず、もっと突っ込んでほしかった。

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