略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
自分は何をしたいのか、本当の自分はどんな人間なのか、頭を悩ませる年齢。子供でもない、大人でもない、とっ散らかった時期の女の子たちを、至近距離から見つめるのが今作。一見タフだけれども内側には悲しみを抱えているミンミ。スポーツだけに打ち込んできたのに、恋を知って人生を揺さぶられるエマ。きちんと性体験をしてみたくてトライするもうまくいかないロンコ。彼女らは、嫌なことやみっともないこともやる。それがまた共感できるのだ。3回の金曜日を舞台にした話だが、3回目の金曜の後に道がはっきり見えた、とはならないのもリアルでスマート。「許す」ということの美しさもさりげなく感じさせる。
1作目は2019年、Netflixで最も人気があった作品。この続編ではもっと予算が奮発されたのは明らか。しかし、だからといってより良い映画になるとは限らない。コメディを得意とするアメリカの人気者、アダム・サンドラーとジェニファー・アニストンが組むというのがそもそもの魅力だったが、今回は派手な車の衝突があったり、エッフェル塔から落ちそうになるスタントがあったりと、ほとんどアクション映画(だが決して‘優れた’アクションではない)で、笑いは後回し。ストーリーも、いろいろ起こるものの引き込む力がなく、犯人が誰かもどうでも良くなるほど。私生活でも友人のふたりはパリや島に行けて楽しかったのだろうが。
「事実は小説より奇なり」を地でいく話。多少ドラマタイズされているにしろ、あの人気のゲームが世界の人々に届くのにこんな裏話があったとは驚き。偶然テトリスを発見、可能性を確信して、大きなリスクを負ってでも権利を獲得すべく奔走するのは、日本に18年も住んだオランダ人ヘンク・ロジャース。純粋に情熱を持つ彼を、欲深く、金を持ったライバルが邪魔する。速いテンポの中でいろいろなことが起こり、手に汗を握りっぱなし。冷戦、それもソ連の崩壊前夜という時代背景がさらに面白くする。そして実は素敵な友情物語でもあるのだ。エネルギッシュでチャーミングなタロン・エジャトンの魅力も光る。
ごく普通に生活をしていても、人間ならば誰にだって葛藤や思わぬ出来事があるもの。同時にちょっとした幸せな瞬間もあるし、悲しみも時間が過ぎる中で少しずつ乗り越えていったりする。80年代のパリを舞台にしたこの映画は、シングルマザーとなった主人公エリザベートとティーンの子供たちのそんな姿を、数年をかけ、ゆったりと見つめていく。夫に出て行かれたエリザベートの絶望と不安はしっかり描かれるものの、養育費も払わない夫は映画に一切出てこず、彼女が新たな毎日をどう生きていくのかにフォーカス。子供たちのキャラクターもよく書かれているし、彼らと母との関係も自然。人と人のつながりを優しい目線で見つめる美しい作品。
“普通”から最もかけ離れた人だったデヴィッド・ボウイを語るのにとてもふさわしいドキュメンタリー。他人のナレーションで解説や説明を入れるのではなく、彼自身の言葉、映像、また彼に影響やインスピレーションを与えたものをランダムに綴って万華鏡のように見せていくのだ。視覚にも聴覚にも激しく訴えかけてくるエネルギッシュさがありつつ、同時に哲学的、瞑想的で深くもある。ボウイという人物を知識として理解できるというより(そもそも、あの偉大な人物を本当に理解するなんて可能なのだろうか)、あらためてすごかったのだなと肌で感じさせてくれる。ぜひ、優れた音響を持つビッグスクリーンで見たい映画。