略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
笑い、衝撃、怖さを絶妙に盛り込んだ娯楽作。第一の勝因は断然ミーガンのデザインにある。ホラーと人形は昔から良いコンビだが、ミーガンもかわいいのか不気味なのか微妙(この特殊メイクを手がけたのは『ザ・ホエール』でブレンダン・フレイザーを変身させたエイドリアン・モロー)。しかも彼女はAIなので動く。いつのまにかそこにいたという古典的な驚かせ方もやってみせるし、何よりダンスをはじめとする動き方は頭に焼き付いて離れない。ばからしい魅力の中に、フェミニスト、LGBTQ、テクノロジーの脅威、子育てなどタイムリーな要素もさりげなく含まれていて、とにかくさすがだ。
「シュレック2」で初登場し、たちまち大人気を得てから、もう20年近く。今作も冒頭からアクション、ダンス、音楽たっぷりのシーンで始まり、エネルギッシュさと楽しさいっぱい。「シュレック2」で大ウケだった可愛い表情のギャグのアンコールもある。ただ、人生はいつか終わるもので、しかもそれはすぐそこに来ているのかもしれないと気づく今作のプスは、これまでより少し大人になった感じだ。アニメーションの面でも、最近ハリウッドのアニメーションでトレンドである2D要素をブレンドするスタイルを取り入れていて、モダンになっている。前半には猫がたくさん出てくるシーンがあるので、猫好きはぜひお楽しみに。
この映画の魅力はなんといっても主演のナオミ・クラウス。ジュリア・ロバーツなり、サンドラ・ブロックなり、近年は40代以上の女優が主演のロマンチックコメディも作られてはいるが、年齢や欠点を堂々と表に出し、それをコメディに使うクラウスは好感度たっぷりで共感できる。予想通りの展開で、決して新鮮とは言えないストーリーなのに、まあまあ楽しんで見られるのはまさに彼女のおかげ。異国の素敵な場所という設定もまたこのジャンルの定番ではあるとはいえ、クロアチアの景色が目に優しいのはたしか。長いこと心には残らないだろうけれども、明るい気持ちにさせてくれる映画。
認知症をテーマにした「ファーザー」で高く評価されたフロリアン・ゼレール監督がこの新作で扱うのは、メンタルヘルス。その苦しみを抱えるのが両親の離婚で心が傷ついたティーンの男の子とあって、トーンは前作よりずっと重く、暗い。「ファーザー」が認知症を内側から見つめたのに対し、今作は距離を置いたところから語る。アプローチの違いなのだが、そのせいで少年の心に寄り添えず、ひたすらやるせなさを感じてしまう。一方で、映画は、その少年と父だけでなく、父とその父の関係も平行して描き、お互いを重ねてもいく。そんな見せ場たっぷりの役に、ヒュー・ジャックマンが全力で挑んでいる。
クリストファー・ランドンらしく、笑いと優しさのあるホラー映画。しかし、ちょっと詰め込みすぎた感じ。最初はコメディで始まるのだが、トーンが変わっていき、最後はスピルバーグ風の感動ものになる。途中、カーチェイスもあれば、子育てのありかたに触れたり、幽霊のアーネストがどう死んだのかを探るミステリーになったり。とくに中盤は間延びする。もっとすっきりさせて90分で収めるべきだった。キャスティングはとても良い。せりふなしで観客に思い入れさせるデヴィッド・ハーバーはさすがだし、主人公ケビンの相棒となるテクノロジーが得意なお隣さんをオタクっぽい男の子ではなくアジア系の女の子にしたのも良いアイデア。