猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • ノースマン 導かれし復讐者
    カットなしの長回しで撮影したアクションシーンに感嘆
    ★★★★

    ロバート・エガースのキャリアで最大規模の作品ながら、じわじわと迫り来る恐ろしさ、不穏な雰囲気、モノクロームの色調など、彼らしさはあちこちに。古代アイスランドのサーガに強いオマージュを捧げる今作は、原始的、神話的で、セリフも詩的。それはアクションシーンの撮影法にも貫かれている。子供も含む大勢のエキストラが登場し、誰かが馬から落ちたりもする混沌とした状況の中で主人公がバトルを展開するシーンも、全部カットなしの長回しで撮っているのだ。演技もすばらしければ、ヘリコプターでしかたどりつけなかったという人里遠く離れたロケ地も美しい。ぜひビッグスクリーンで体験するべき壮大なエピック映画。

  • きっと見つける
    犬への愛に満ちた、家族で見るのにおすすめの映画
    ★★★★★

    エンドクレジットにも、犬好きな人たちが集まって作ったことは明らか。主人公の一家が犬を探す中で出会う人たちにもまた、犬への愛がある。お決まりパターンな感じもあるのは否めないものの、純粋に心が温まる映画。動物好きとしては、犬がかわいくて、それだけでいつまででも見ていられる。ただし、ゴンカーをラブラドールにする必要はなかった。エンドクレジットを見ると本物のゴンカーはラブラドールではなかったようだし、本当にシェルターにいそうな犬にすることで、完璧なルックスではなくても保護犬を引き取って絆を培おうと思う人が増えたのではないか。

  • SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
    世の中を変えることはできるのだ
    ★★★★

    映画は、数々のセクハラを暴かれながらもトランプが大統領選で勝ってしまった1年前から始まる。その取材も担当したミーガン・トゥーイーは嫌がらせを受けたが、それでも彼女と同僚のジョディ・カンターはワインスタインのセクハラを暴こうと挑んだ。このふたりの記者の誠意と熱意に満ちた姿勢には感動するが、話してくれるかどうかわからない被害者に会うためにカリフォルニアやイギリスまで記者を飛ばした上司もすごい。たった1年前には考えられなかったことを可能にしたのは、優れた女性ジャーナリストと、勇気を持って名乗り出た女性たちなのだ。世の中を変えることはできるのだというポジティブなメッセージを与えてくれる作品。

  • ほの蒼き瞳
    前半はスローだが最後に意外なる展開がある
    ★★★★★

    1830年代の東海岸を舞台にしたゴシックミステリー。ハワード・ショアの音楽と、スコット・クーパー作品の常連であるマサノブ・タカヤナギのシネマトグラフィーが、厳かに迫り来るムードを醸し出す。ストーリーの語り方も同様で、静かに、ゆっくりと進むが、後半に思わぬ展開が待ち構えていて、そこまで見た甲斐があったと思わせる。いつものことながらすばらしいクリスチャン・ベイルの演技の見せ場も最後にしっかり用意されていて、彼がこの役をやりたいと思ったことに納得。エドガー・アラン・ポーのオリジンストーリーであるところも興味深い。シャルロット・ゲンズブールが無駄遣いされているのがちょっともったいない感じ。

  • コンペティション
    痛快でデリシャスな業界風刺コメディ
    ★★★★

    映画作りの裏にあるエゴを描く痛快な風刺コメディ。名声を後世に残したい大金持ちが製作する映画に集まったのは、奇才と呼ばれる女優監督、地道な演技派の役者、人気はあるがやや不真面目なスター。強烈な個性を持ち、アプローチも違うこれらの人たちがぶつかり合う状況は、誇張されているにせよ、きっと実際の現場で見かけられることなのだろう。そんな自虐的なコメディを、大胆かつ遊び心たっぷりにやってみせるクルス、バンデラス、マルティネスに大拍手。ダークなクライマックスの後にまだひとひねり用意されている脚本は実にすばらしく、映画が終わってからもその後の展開に思いをめぐらせてしまった。実に美味しい傑作。

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