略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
ショーン・ペンが監督をするのはこれで6度目ながら、主演も兼任するのは初めて。ワルで父親としても夫としても無責任だが、クラシック音楽など高尚な趣味を持ち、チャーミングなこのキャラクターは、役者として魅力的だったに違いない。事実、見せ所はしっかり作っているし、しかも話は彼と娘の関係が中心で、実の娘ディラン・ペンとのドラマチックなシーンもたくさんあるのだ。母親似のルックスを持つディランは、女優としても母親同様じっとしていても存在感があり、これからの可能性を感じさせる。しかし、話は同じことの繰り返しが多く、音楽に頼りすぎで、ややスローな感じ。ビジュアルも、美しいものの、既視感がある。
Netflixのコメディシリーズ「マーダーヴィル~謎解きはアドリブで~」のクリスマススペシャル。レギュラーキャストは台本を渡されているが、ゲスト出演者は自分が何を演じるのかもわからずに飛び込んでいき、自分の名前のまま役を演じるというコンセプト。今作のゲストはコメディの才能が抜群のジェイソン・ベイトマンとマーヤ・ルドルフ。さらに最後にもうひとりサプライズの人気コメディアンが登場して、たっぷり笑わせてくれる。死んでいるサンタも含み、演じている役者たちも笑いを抑えるのに必死な様子。ジョークが連発される中でも、誰が殺人犯なのか、手がかりがこっそり出されていく。純粋に楽しい、ユニークなホリデー作品。
13年待った甲斐は十分にあった!1作目同様、これは絶対にビッグスクリーンで、そして3Dで見るべき作品だ。1作目の大ヒットが巻き起こした3Dブームは、その後チープな変換バージョンが多数出たせいですっかり衰えたが、今作はそもそもなぜ人が1作目の映像に圧巻されたのかを思い出させてくれる。とりわけ水のシーンは美しくて、いつまでも見ていたいほど。ストーリーも面白いし、戦闘シーンはスリル満点。ジェイクとネイティリの子供たちのキャラクターもそれぞれにしっかり考えられていて、ストーリー上の存在意義がある。キャメロンのイマジネーションと物語の語り手としての才能に改めて感心させられた。
ルイス・ウェインの描いた絵がそうだったように、この伝記映画にもカラフルさと遊び心がある。それに、優しさも。才能はあるが、人生でいろいろな問題に直面するウェインを、この映画は温かい目で見つめていくのだ。この映画のトーンに大きく貢献するのが、ベネディクト・カンバーバッチ。エキセントリックでありつつ純粋で脆いところもある主人公を、彼はまさに優しさと遊び心を持って演じている。当然猫は出てくるし、とてもかわいいのだが、猫好きとしてはもっと猫の出演時間があってもよかったのにとちょっと欲張りなことを思ってしまった。とは言え、猫の地位を向上させてくれたこの人物の映画は、猫好きなら見るべき。
やはり今月Netflixで配信になった2本のクリスマスロマコメ映画(『フォーリング・フォー・クリスマス』『クリスマス・ウィズ・ユー』)と比べると、雰囲気的にはやや大人。目を背けてきた過去の傷に向き合うというストーリーがあるところが違っている。だが、設定やシーンにお決まりのパターンがありすぎるのは同じ。恋に落ちようとしているふたりのうちひとりに婚約者がいるというのもそのひとつ。セリフも陳腐すぎて、次に何を言うかピタリと当ててしまったことも何度か。それでも見られたのは犬のエヴァのおかげ。犬と赤ちゃんは視聴者の興味を引く伝統的なトリックで、そこですら新しくはないのだが。