略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
マーク・ウォールバーグとハル・ベリーの共演というのは気になるし、ほかのキャストも豪華。ハリウッドの娯楽作とあり、アクションシーンにもしっかりお金がかかっている。男女のアクションの見せ場を平等にしたところも、2024年らしく、評価できる。だが、肝心な内容はというと、いろいろな映画の切り貼りだらけ。ブリーフケースの奪い合いでカーチェイスになるというシーンは過去に何度あっただろうか。盛り上げようとする音楽ですらありきたりだし、予想通り最後は続編への可能性を匂わせる。ウォールバーグとベリーが魅力的だけに、適当な時間つぶしに良い程度の映画になってしまったことがなおさら残念。
監督のダビド・プジョルは過去に、エル・ブジについてと、ダリについてのドキュメンタリーを作った人。役者を使った初の映画がこれだったというのは、大いに納得。この手の映画で料理を美味しそうに撮るのは大前提だが、これは大合格。出てくる料理は芸術的かつ個性的で、つい手を伸ばしたくなってしまった。独裁政治の終わりの時期にあった1974年のスペインの状況を入れつつも、全体的にコミカルで優しさのあるトーンと、魅力的なキャラクターで楽しませてくれる。この分野の新たな個人的お気に入りに加わった。これが好きだった人は、アメリカで大絶賛の「一流シェフのファミリーレストラン」(日本はDisney+)も必見!
今最高に乗っているライアン・ゴズリングとエミリー・ブラント(#Barbenheimerのふたり!)の共演で、普段スターの影に隠れているスタントマンに焦点を当てる物語。だが、その潜在性を十分活かしきれなかった。アクションコメディなのだから楽しませてくれればリアリティがなくても問題ないのだが、ストーリーは薄く、アクションはたくさんあっても斬新さはない。スタントマン出身のデビッド・リーチの個人的な思い入れは感じられるし、撮影現場のシーンはさすが普段そこにいる人たちにならではのディテールが入っているが、映画自体が面白くないため、自己満足、内輪受けになってしまっている。もっと良い作品になれたはずと残念。
ごく普通のメキシコ人家族の1日を静かに追っていく映画。後半にかけて観る者の感情は次第に高まっていき、最後は良い意味でなんとも言えない気持ちになる。登場するキャラクターや彼らの間のやりとりは、非常に自然かつリアル。どうでも良いような会話が自分もそこにいるような気持ちにさせ、住む国や文化は違っても人は人なのだということを思い出させる。そして、死は誰にでも訪れるものであり、本人や身近な人は、それぞれにその辛さに直面するのだということも。このようになにげないようでいてぐっと心に迫る映画を作るのは、容易ではない。可能性大と言われつつ逃したものの、オスカー候補入りしても良かった作品。
根は悪くないが人生の良くないところにいる人が間違ったことに手を出してしまうというのは、ありがちながら面白い設定。コーエン兄弟のテイストをマイルドにした感じのこの映画は、ダメダメなふたりがどんどんまずいほうに行く様子を、愛嬌を持って描いていく。幼馴染みで、過去作でも組んでいるマット・デイモンとケイシー・アフレックの相性は、今回もばっちり。しかも舞台は彼らの出身地ボストン。ふたりが楽しんでいるのはたっぷり伝わってくる。助演の顔ぶれもすごく贅沢で、見せ場が少ないのがややもったいない感じも。斬新さはないが、ユーモアあり、アクションあり、展開のペースも良く、リラックスして楽しめる。