略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
近年Netflixが量産しているロマコメには「今どき良くこんなものを恥ずかしげもなく作れたな」と思うものもある中で、これは悪くない。落ち込んだ状況にある主人公の人生が異国に来たことで変化するという設定はおなじみながら、次のせりふまで読めるということはないし(最近はそういうのが結構ある)、エンディングも予想したのと微妙に違っていた。映画はややご無沙汰だったハリー・コニック・Jr.は、チャーミングな存在感を発揮していて、好感が持てる。歌手の役とあり、彼の歌声を聴けるのは最初から期待していたが、地元の店で歌う女性メリナを演じるアリ・フミコ・ホイットニーの声も、とても良い。彼女は今後活躍してくかも。
「アシスタント」に続き、キティ・グリーンとジュリア・ガーナーが実社会で若い女性たちが直面するセクハラ、搾取などについてまたもや鋭く切り込む。前作の舞台がニューヨークの映画会社だったのに対し、こちらはど田舎のパブなので、女性を性の対象としてしか見ない態度、女性蔑視、有毒な男らしさは、よりあからさま。元ネタであるドキュメンタリー「Hotel Coolgardie」で実際にとらえられた出来事も多数使われているが、この映画ではより危機感、恐怖が高められ、ドラマチックに。元ネタと大きく違うラストは、映画的ではあるかもしれないが、エンパワメントを感じさせてくれる。次の作品が待ちきれない監督のひとり。
タイムリーで大胆なコンセプト。ただ、ジョーダン・ピールの「ゲット・アウト」を思い出させる要素が多く、ちょっと既視感も。「ゲット・アウト」は普通のホラーのように始まるのに社会派の映画だったというサプライズもあったが、今作は冒頭から強烈なメッセージで始まる。それはそれでもちろん良いが、やはり移民問題を扱う最近のホラー「フォーエバー・パージ」に比べてもインパクトに欠ける感じ。それでも、「もしトラ」の今、アメリカで多くの移民が抱えている不安に焦点を当てるということには(この映画のアメリカ公開は2022年とはいえ)、意味があるといえる。若手のキャストはみんな魅力的で好感が持てる。
「#MeToo」から7年近く経つ中では、未成年だった当時は“合意の上”と思っていたことも、今考えると違うのではないかと疑問を持つ被害者の声も聞かれる。ずっと年上の人物が“ロマンチックな大恋愛”としたことは、果たしてそうなのか。そこへ迫るだけでなく、ハリウッドの要素が絡むのも、この映画を美味しくする。シリアスなテーマにしっかり向き合いつつも、エンディングにも明らかなように、ダークなユーモアを散りばめるのを忘れない。この絶妙なトーンと、気の利いたせりふ(とりわけジュリアン・ムーアの)は、ほかにないもの。今作でオスカー候補入りしたサミー・バーチ(および一緒に話を考えた彼女の夫)の次の作品が楽しみ。
冒頭からいきなり「The Heat is On」の歌が流れ、オリジナルへの回帰を体感。過去作にないほどビバリーヒルズがたっぷり登場するのにも興奮。最初のほうには観光客にお馴染みのエリアでカーチェイスがあり、真ん中の銃撃戦はウィルシャー通り。後半のヘリコプターのシーンもしっかり街を見せるのだ。1作目は道のシーンをパサデナで撮影したりしたが、今回は市が諸手を挙げて協力したのは明らか。父娘の話が中心になるところがストーリー面での違いながら、先が見えているだけに繰り返される論争がややくどい気も。とは言え、娘役のテイラー・ペイジは光っているし、全体的に過去2作に比べてユーモアが増えているのも良い。