猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • ブルーイマジン
    性加害問題をあらゆる方向から深く、繊細に見つめる
    ★★★★★

    性加害問題をすべての側面から見つめる傑作。「狭い世界だし何もなかったように振る舞うしかない」と諦めたり、声を上げれば「役をもらえなかったから被害者ぶっているのか」と言われたり。性加害を告発された監督の映画が上映中止になれば「作品に罪はない」との意見が出たりする。SNSによる二次被害やメディアの取り上げ方、映画界に限らず日常の中にある小さなセクハラにも触れるし、東京で暮らす移民の女性も登場。深刻な問題を鋭く、リアルに突くが、同時に女性たちに向ける目線は繊細。彼女らが互いを支え合う姿に力づけられ、最後はなんとも言えない希望を感じた。見事なバランスを取った松林麗の監督としての今後に強く期待。

  • アバウト・ライフ 幸せの選択肢
    キャストとテーマは良いのだが
    ★★★★★

    何度も書いてきたが、ロマコメはラストが見えているので、観客にキャラクターに思い入れさせ、そこまでの過程を楽しめるようにさせることが大事。それは今作のように登場人物が大人であっても同じ。だが、この映画はキャラクターが薄っぺらく、トーンもコメディとドラマ、どっちつかずで、テンポも良くない。結婚というものを違う角度から考察するようでありながら、結局何も得られず、フラストレーションが残る。同じようなテーマや設定でも、たとえばナンシー・マイヤーズが手がけたら生き生きして楽しいものになったのではと想像してしまう。キャストは超豪華でこの人たちが揃っているのを見られるのは純粋に楽しい。

  • デューン 砂の惑星PART2
    オースティン・バトラーがすごすぎる
    ★★★★★

    これぞシネマ体験。できるだけ大きなスクリーンで観るべき映画。筆者はIMAXで観て、完全にその世界に引き込まれてしまった。アクションは前作以上の迫力、壮大な砂漠の風景は圧巻もの。数々のファイトシーンもそれぞれにユニークで息を呑む。パート1で多くのことを乗り越えた主人公ポールは成熟し、運命を背負うようになるため、ストーリーもよりドラマチック。ただ、次を予定しているからだろう、答がないままの問いかけも残されている。ポールとチャニを演じるシャラメとゼンデイヤはスクリーン上の相性ばっちりで、どちらもスターとしてのオーラたっぷり。しかし本作の目玉はなんといってもオースティン・バトラー。彼はすごい!

  • コットンテール
    国境を越えた普遍的なテーマ
    ★★★★★

    コミュニケーション力があまりない不器用な夫、なんでもきっちりと考えている優しくてよくできた妻。そんな夫婦の形は、日本でも、イギリスでも、おそらくよくある光景。愛する人が亡くなった時、その悲しみをどう乗り越えるのかは人それぞれで、そこにもまた国境はない。この映画では、リリー・フランキー演じる主人公、錦戸亮演じる息子、キアラン・ハインズ演じる旅先で出会う男性が、違う形でそこに向き合う。日本に滞在経験もあり、日本語ができる若いイギリス人監督ならではの作品。細かい部分にやや気になるところもなくはないが、人間愛と誠意から生まれたのはたしか。今作でデビューした彼が次にどんな映画を作るか楽しみ。

  • アメリカン・フィクション
    最後のシーンまで笑わせるダークで絶妙な風刺コメディ
    ★★★★★

    2023年の個人的ベスト映画のひとつ。人々が潜在的に持つ偏見、ステレオタイプを、シビアかつ痛快に突く。たとえ多様化に賛成のリベラルでも同じ。事実、そういった人たちのユーモラスなシーンも多数ある。だが、黒人同士の間でもそんな状況についての考え方が違うところもまた興味深い。今作で監督デビューするコード・ジェファーソンは、自身や友人の体験もあるところへこの原作小説に出会い、共感したとのこと。このテーマで最後まで笑わせるが、ほかにも家族との関係、家族の中での役割といった、誰もが共感できる要素も散りばめられている。出演者は全員すばらしく、撮影はわずか半日だったというアダム・ブロディも絶妙。

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