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三度の飯よりロックが好き、そんな私を喜ばせるかのような昨今の映画界。ロック関連の映画というのはすぐチェックしてしまう私にとって、昨年はビョークの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『ハイ・フィデリティ』『あの頃ペニー・レインと』など、良質な作品に恵まれ一喜一憂しておりましたが、この『ヒューマンネイチュア』もロック・ファンなら期待せずにはいられない内容とその布陣です。
前述のビョークのプロモーションビデオ(以下PV)を手掛けるほか、ダフト・パンク、ベック、ケミカル・ブラザース、レディオヘッドなどの(特にカッコイイ!)ビデオを手掛けてきたミシェル・ゴンドリーという、フランス出身のCM界(スミノフ、リーバイスほか)及びミュージックビデオ界の大御所がこの映画の監督(映画は初)。彼のビデオ作品はどれも「おーっ!」と唸らせるものばかりなのですが、私が衝撃を受けたPVがマッシヴ・アタックの「PROTECTION」。ワンショットの映像でエレベーター、マンションの階上、階下をなめまくるその映像は、美しくも想像を超えた技術で曲が終わるまで釘付けにします。そのアイデアと高度な技術の鮮やかさはどれも画期的なんですが、技術だけでなくストーリーと構成が奇想天外なパターンが多いのがこの人。
そして、製作はあの『マルコヴィッチの穴』では監督、『スリー・キングス』では俳優、音楽界ではPV界の大御所(肩書き多い~)のスパイク・ジョーンズです。2001年もファットボーイ・スリムのPV(クリストファー・ウォーケンにダンスさせまくった爆笑ものビデオ)でMTVのビデオ大賞を獲ったばかりの彼。ビデオではアイデア一発勝負が多く、今後の映画監督作にも期待してしまいます。
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サントラは『トゥーム・レイダー』『スポーン』のグレアム・レベル。この人はロック関係薄そうな、スコア系のコンポーザーかなと思うでしょ? しかし、この人は70年代末にインダストリアル・ロック(前衛的なハード・ノイズ)の神様として、アンダーグラウンド・シーンにおいて崇めたてられていた人なのです(今ではかなりのサントラ手掛けてます)。もちろん、私もファンでした……。
とまあこのような制作陣に加え、キャストもティム・ロビンス、パトリシア・アークェットと出演者もロック人脈でもあります。『マルコヴィッチの穴』でおなじみチャーリー・カウフマンの脚本は、かなりイッちゃってるので、なるべくパンフ等でストーリーを読まずに観ることを勧めます。あらすじからして、やっぱり変ですから。
製作陣から見てもロック・ファン、PVファンには観て欲しいのですが、同じ作品を何度でも観てしまうシニカルなリピーター派の方に、ぜひこの作品を観て欲しいです。1回目はそのストーリーの馬鹿馬鹿しいほどの設定に驚き、2回目はセンスのいい演出(とスタッフの苦労)に涙、3回目はよく観ると凄いカメラの動きに感心。
コメディなんだけど大爆笑できない(設定の妙さに期待しても笑えません)、でも後味が良くて、悪い。こんな映画1回しか見ないのはもったいないです。
ヒューマンネイチュア
2001年/
アメリカ・フランス/3月9日公開/恵比須ガーデンシネマ、銀座テアトルシネマ/1時間36分/配給: アスミック・エース
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チェック:ビョーク、ケミカルブラザーズなどのミュージッククリップを手掛けてきた、ミシェル・ゴンドリーの監督デビュー作。世にも毛深い女とマナーに厳しい博士、猿として育てられた男が繰り広げる奇想天外な物語。『マルコヴィッチの穴』のチャーリー・カウフマンによる脚本が、前作以上にシニカルなアイロニーとブラック・ユーモアに満ちた独特の世界を生み出している。ゴンドリーらしいスタイリッシュな映像と、さり気ない音楽の使い方も秀逸だ。
ストーリー:全身が濃い体毛に覆われてしまうという、原因不明の病を持つライラ(パトリシア・アークェット)。人間とは隔絶された森の中で暮らしていたが、男が欲しいという抑え難い欲望により、ある男性(ティム・ロビンス)と付き合うことに。 |
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