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【映画監督】 |
いずれは映画監督を狙っている?
20代の若きハワード・ヒューズは父親の遺産を手に映画『地獄の天使』を製作、監督。演じるディカプリオがきびきびと撮影クルーに指示を出し、自ら空中スタントまでやってのける光景は相当カッコいい。また、サイレント映画として完成させたものの、トーキーの出現により慌てて全編を音声入りで撮り直し、さらなる財産と時間をつぎ込むこだわり様も、どこぞの世界的名匠を思わせる凄まじさ(とお茶目さ)。『セレブリティ』でハリウッドスター役は経験済みのディカプリオだが、若き監督役もなかなかどうしてお似合いだ。自身の製作会社アピアン・ウェイの第1弾作品として本作で製作総指揮にも初挑戦したディカプリオ。ひょっとして、いずれは映画監督の座も狙っている?
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【パイロット】 |
パイロットの制服姿はかなりツボ!
飛行機会社を設立するだけでなく、自らもパイロットとして操縦桿を握っていたハワード・ヒューズ。飛行スピードの記録を次々と更新したことでも知られる彼だが、劇中、最もロマンティックなのはキャサリン・ヘップバーン=ケイト・ブランシェットとの夜間飛行。2人でキャイキャイと操縦桿を握り合うレオ様とケイトの姿に、「落ちてしまえ……」なる嫉妬心がわき上がらないでもないが、とりあえず名シーンなのは確か。パイロットといえば、もちろん『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のフランクも記憶に新しいディカプリオだが、あちらはしょせん何ちゃってパイロット(ただし、制服姿は絶品)。リアル・パイロットなディカプリオは本作でこそ堪能できる。
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【プレイボーイ】 |
私生活では意外にまじめな女関係
数々の女優と浮名を流したハワード・ヒューズだが、本作でクローズアップされているのはキャサリン・ヘップバーンとエヴァ・ガードナーとのロマンス。女性を端から口説くハワードが描かれていようものならば、(細かな恋愛ゴシップはさておき)私生活では1人の女性に対しての交際期間が意外と長いディカプリオとの違いが比較できるのだが、2人に絞られて描かれているのが妙に気になる。「特別な絆があったけれど、2人は似すぎていたんだ」とディカプリオが分析するヘップバーンの存在はともかく、くっついたり離れたりを繰り返した美女エヴァ・ガードナーっていったい…………。何はともあれ、女性関係に華やかなハワード=レオ様はめっぽう小憎らしく、その分だけ素敵だ。
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【航空王】 |
ビジネススーツを着こなす大人の男
ハワード・ヒューズは映画製作に情熱を燃やす一方、新型飛行機の企画開発、航空会社の買収など、航空業界で躍進。少年のごとき夢見がちなところがあるとはいえ、驚くべき創造力と卓抜したビジネスセンス、あくなきチャレンジ精神を持つ天才ビジネスマン、ハワードは、年齢的にも熟れてきたディカプリオだからこそ演じられるパート。完璧主義がたたって失敗に追い込まれたり、目先のことにのめり込みすぎて女性に去られてしまったりといった"プチ悲劇要素"からも、大人の男ならではの苦悩が感じられ、どこかくすぐられるものがある。仕立てのいい高級ビジネススーツをもビシッと着こなす"大人レオ"に、俳優レオナルド・ディカプリオの新境地を見た思い。
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【精神病】 |
イッちゃってるレオもかなりすてき
ハワード・ヒューズの晩年の奇行は有名だが、本作でも栄光の裏で強迫神経症に悩まされた闇の部分が描かれている。外界のばい菌を異様なまでに嫌い、高価な石鹸で皮膚が擦り切れそうになるまでゴシゴシと手を洗うハワード。オフィスに閉じこもり、全裸でブツブツと何かを唱えながら歩き回るハワード。また、幼い頃からの難聴も、完璧ではない彼を物語る上で重要なファクターとなっている。精神的、肉体的な障害を持つ役といえば、ディカプリオがアカデミー助演男優賞にノミネートされた『ギルバート・グレイプ』が思い出されるが、もちろん、病名も違えば演技も別物。何年もかけてハワード・ヒューズ像をリサーチしたディカプリオの役者としての幅がここでも確認できる。
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【横領容疑者】 |
法廷を席巻するディカプリオ
米国空軍から受け取った軍用機開発資金を不正に使った疑いで公聴会に召喚されたハワード・ヒューズが、敵対する上院議員ブリュースターと火花を散らすシーンは本作のクライマックスの1つでもある。糾弾してくる相手の攻撃を正義と信念をもって饒舌にかわし、堂々と反撃するハワード=ディカプリオはかなり頼もしく、このエピソードだけで1本の法廷映画を観たかのようなカタルシスが味わえる。過去、法廷劇には縁のなかったディカプリオだが、ふと思い出されるのは『レインメーカー』の主人公である若き弁護士役を演じる可能性があったらしいということ(主演したのはマット・デイモン)。法廷を席巻するディカプリオをようやく目にすることができ、ちょっとうれしい。
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【セレブ】 |
セレブの悩みは共通
ハワード・ヒューズはリッチでハンサム、実業家であり、映画プロデューサー兼監督でもある正真正銘のセレブリティだ。それゆえ、美しい女優をエスコートしながらレッドカーペットを歩く姿も、カメラマンからひっきりなしにフラッシュを浴びせられる姿も、現役ハリウッドセレブなディカプリオが演じればこその説得力がある。事実、ディカプリオはメディアからどこまでも追いかけ回されるハワードに自分自身の人生を重ね合わせたのだとか。劇中にはハワードに不誠実なフラれ方をした女優が怒り狂って彼の車をぶち壊し、その様子がゴシップ誌のネタとなるくだりがあるが、女ったらしが災いしたこととはいえ(この時の新恋人がエヴァ・ガードナー)、少々気の毒かもしれない……。
テキスト:渡邉ひかる
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