リプリー:映画短評
リプリー自尊心の低い男が落ちていく蟻地獄
「太陽がいっぱい」と同じ小説を原作にしているが、この2つは全然違う映画。マット・デイモン演じるトム・リプリーは、嘘つきではあるが狡猾ではない。これは、犯罪スリラーというより、自尊心が低く、自分でないものになろうとする彼が図らずも蟻地獄に落ちていく様子を描く、サスペンスに満ちた悲哀の物語。とりわけエンディングは切ない。「太陽がいっぱい」のテーマ音楽もいつまでも耳に残るが、今作ではジャズが非常に効果的に使われている。質の高い、センスのある大人のドラマで、出演陣の顔ぶれも含め、ワインスタイン兄弟のミラマックスの全盛期を象徴する作品のひとつだ。
この短評にはネタバレを含んでいます