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42 ~世界を変えた男~ (2013):映画短評

42 ~世界を変えた男~ (2013)

2013年11月1日公開 128分

42 ~世界を変えた男~
(C) 2013 LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

清水 節

「倍返し」ブームへの大いなるアンチテーゼ

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 時代を変えた生き様。白人文化であったベースボールが、有色人種に門戸を開く上でキー・パーソンとなった男の物語だ。近代メジャーリーグにおいて黒人初のプレーヤーとなり、後に全球団共通の永久欠番となった背番号42、ジャッキー・ロビンソン。易しい語り口で説く脚本・監督のブライアン・ヘルゲランドは、たった1つのテーマを繰り返し強調する。それは、激しい差別にただひたすら耐えた事実だ。
 
 奴隷制度は廃止されても人種隔離法の下、公然と差別が行われていた第2次大戦直後。MLBに大抜擢されたロビンソンは、チーム内での排斥、対戦相手からの罵倒、観客の野次に、耐え抜く。奴らと同じレベルで闘わない。彼を見初めたドジャースGMブランチ・リッキーに託された「やり返さない勇気」を守り通すプロセスが胸を打つ。無抵抗の精神こそがメジャーリーグに新たな時代を切り拓いた。
 
 構成は『あまちゃん』のようだ。主人公は成長することなく彼の存在に触れて周囲が変わっていくのだから。報復の連鎖の虚しさが忘却され始め、鬱屈した人々にカタルシスを与えるため勧善懲悪のテーゼが甦る兆しもある中、この映画の存在はスマッシュヒットだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

信念がなければ何も始まらない、変わらない

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 黒人初のメジャー・リーガー、ジャッキー・ロビンソンの実話。有色人種の置かれた社会的立場や世間の反応など、今となっては実感としてなかなか伝わりづらい当時の過酷な状況を生々しく織り込みつつ、人間の揺るぎない信念が社会全体の意識に変革をもたらしていく過程を、当事者である個人の視点から見つめた作品といえよう。

 まずは、ジャッキーの人生において最も重要な時期、つまりドジャースとの契約からメジャー・デビューまでの2年間に物語の焦点を絞ったブライアン・ヘルゲランド監督(脚本も兼任)の采配を評価したい。そのおかげで、当時の人種差別の根深さ、その壁に挑戦した彼の苦難というものが、説得力を持って語られることとなった。

 理不尽な差別や非難にも反論することなくじっと耐え、自らの実力と謙虚な態度で大衆の尊敬と支持を勝ち取ったジャッキーの姿にも胸を揺さぶられるが、来るべき公民権運動の時代を見据えた上で彼の才能と人間性に賭けた球団オーナー、ブランチ・リッキーの先見の明にも感心する。信念を持ち続けるのは決してたやすいことではないが、しかしそれがなければ何も始まらない、変わらないことを痛感させてくれる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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