THE ICEMAN 氷の処刑人 (2012):映画短評
THE ICEMAN 氷の処刑人 (2012)異常な2面性のルーツをもっと掘り下げて欲しかった
言うなれば、人殺しを生業としたマイホームパパの話である。家庭では妻や子供にありったけの愛情を注ぐ心優しき父親、しかし外では平然と人殺しを繰り返すマフィアのコントラクトキラー。主人公のリチャード・ククリンスキーは実在の人物だが、生涯に殺した相手の数は100人以上にものぼるという。その極端な2面性はどこからきのか?おのずと彼の内面に興味が沸くわけだが、残念ながら本作ではその答えがなかなか見えてこない。
物語は良き家庭人と冷酷な殺し屋という彼の2つの顔を対比しつつ、どのような経緯でマフィアに雇われたのか、いかにして家族にバレることなく二重生活を送ったのかを淡々と描いていく。だが、それはともすると事実の羅列に終始してしまい、心理分析的なアプローチが手薄になってしまった感は否めない。彼の生い立ちや弟との関係などの背景をもう少し深く掘り下げても良かったように思う。
主演のマイケル・シャノンは抜群の存在感だし、従来のイメージを覆すクリス・エヴァンスやデヴィッド・シュワイマーの怪演も面白い。ヘタレなチンピラ役を嬉々として演じるジェームズ・フランコのカメオ出演も嬉しい驚き。役者は揃っている。