大統領の執事の涙 (2013):映画短評
大統領の執事の涙 (2013)ライター2人の平均評価: 4
黒人差別の歴史は、まるっと本作にお任せ
本年度米アカデミー賞では同じく黒人奴隷問題を描いた『それでも夜は明ける』にお株を奪われてしまった。だが、歴史を一から学ぶ上で本作は必見だ。
キング牧師の奮闘など断片的に彼らの闘いを知っているが、改めて黒人執事の生涯を通して振り返ると、今ある彼らの地位は血や涙を流しながら勝ち取ってきたモノであることを思い知らされる。しかも世の流れにノって政府が黒人解放に動くも、ホワイトハウス内の彼らの待遇は向上しなかったという皮肉も効いている。
本作はオバマ大統領効果で誕生したのは明白だ。だが、いまだ歴然と存在する人種差別を鑑みると、問題の根深さは歴史の長さと比例することを痛感せずにはいられないだろう。
古き良きアメリカの裏側は生き地獄だった
歴代米大統領に仕えてきた実在の黒人執事セシル・ゲインズの半生を通じ、アフリカ系アメリカ人の歩んできた苦難と残酷の近代史を振り返る歴史ドラマ。“アメリカは外国の歴史についてとやかく言うが、自国の暗い歴史は見て見ぬふりをする。強制収容所なんてアメリカには200年も存在したのに”という劇中のモノローグが象徴的だ。古き良きアメリカの裏側は生き地獄にほかならなかったのである。
農園育ちのセシルと公民権運動世代の息子の確執など、一部に批判のある事実の脚色も差別の歴史を紐解く意味で効果的。なお、ジェーン・フォンダやマライア・キャリーなど豪華脇役陣は、油断していると見逃すことも多いので要注意。