ラ・ジュテ:映画短評
ラ・ジュテ人は誰もが今という現実から逃れられない
『12モンキーズ』の元ネタとしても有名な、フランスの映像作家クリス・マルケルのSFショートムービー。文明崩壊後のディストピアを舞台に、ある男が人類を滅亡から救うため過去へとタイムトラベルし、少年時代に空港で見かけた美しい女性と恋に落ちる。全編に渡ってモノクロのスチル写真とナレーションだけで描かれる実験性の高い映画。絶望的な未来像にキューバ危機の時代という制作当時の不穏な世相を投影しつつ、さり気なく1シーンだけ挿入される動画が失われた平和な時間への郷愁を掻き立てる。そして最後の皮肉な結末が、今という現実から逃れられない人間の宿命を物語るのだ。(GYAOにて6/5まで無料配信)
この短評にはネタバレを含んでいます