天使の処刑人 バイオレット&デイジー (2011):映画短評
天使の処刑人 バイオレット&デイジー (2011)美少女暗殺者コンビは疑似パパの夢を見る
大好きなアイドルやファッションの会話に入れ込む、あどけない女の子コンビの正体は暗殺稼業に手を染める殺し屋たち……という設定がまず面白い。冒頭、尼僧の恰好をしてスマートに“仕事”をこなした彼女たちがどんな活躍を見せるのか? そんな期待は、ある意味、裏切られたが、なんとも気持ちの良い裏切られ方だった。
新たな標的の元に向かってからがドラマの本格的な始動で、ここからはアクションではなく会話劇の色を帯びてくる。死を望んでいる標的は彼女たちの父親くらいの年齢。勝手が違い、彼と話をしているうちに情が芽生えてしまうというユーモラスな展開。同時にヒロインたちの本音や秘密がジワジワとあぶり出され、切なさが高まってくる。そういう意味では犯罪劇というより、成長を見つめた青春ドラマ。この“仕事”の後の彼女たちは、明らかに以前より大人になっている。
ふたりの若手女優はもちろんだが、彼らの標的となる故ジェームズ・ガンドルフィーニの妙演も素晴らしい。落ち着きと思いやりの妙演、説得力のあるセリフまわしで、ブレない大人の安定感を見事に体現。まさに、味のあるキャラクターの見本だ。