劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス (2014):映画短評
劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
こ、こ、このムーミンは・・・!?
年がバレるが、ムーミンと言えばカルピスまんが劇場で育った世代。岸田今日子の低音ボイスを聞きながら、桃源郷で繰り広げられる日々のこもごもを、しっぽり楽しんだ記憶がある。だが本作は、嵐にノって、わーい!と一家で船旅に出て、リゾート地で俗世界にまみれるドタバタ劇。汚れていくムーミンを、あなたは直視出来るか!?
製作者は、ムーミン谷のスローライフの魅力を際立たせる為、あえて対極的な場所を舞台設定にしたらしい。つまり私たちが今いる欲望うごめく世界。それをムーミンという癒しキャラを使ってまざまざと見せられと、胸が痛い。期待しがちな癒しとか哲学的なことは求めず、無の境地で観賞すべし。
色と線。シンプルだから味わい深い
まず色彩。そして手描きの黒い線で描かれる形。さらに画面全体の構図。そのすべてが、全フレームで完成されている。そのうえで、映っている事物が、常に滑らかに動いている。
細部を緻密に書き込むのではなく、どこまでも単純化し象徴化していって、残った線、残った色だけで描かれる世界。これもアニメーションという手法だけが持つ大きな魅力だということを、再認識させられる。そんなアニメの基本的な魅力を実現できているので、例えば独自の動きの表現など、目を引く演出をする必要もまったくない。
今回は舞台がリヴィエラなので、色調は南国風。個人的にはムーミン谷の色調が好みなので、今度はムーミン谷の物語をぜひ。